3人で過ごした日々

この笑顔はもう戻らない。

佐々木:その決意をどうやって行動につなげていったのでしょうか。

松永:最初はどう動いていいか全くわかりませんでした。事故から1か月ほど後、関東交通犯罪遺族の会(通称:あいの会)代表の小沢樹里から「1人で抱えないでください」という手紙が届いたのです。

「松永さんが決めたことを私たちはサポートします」と声をかけてもらい、「被害者ノート」というノートをいただいてとても助けになりました。これは、弁護士のこと、司法のこと、自身の精神面について、どんな支援窓口があるのか、具体的なやるべきことなど被害者に必要な事項がほぼ網羅されていて自分で書き込みもできるノートです。

 それまでは法律のことも裁判のことも素人で、刑事と民事の違いさえよくわかっていなかったから、真っ暗だった目の前が足元に少し道が見えたような感覚になりました。

 同じ経験をした人から精神面でも法律面でも、再発防止活動面でも、いろいろな知識やアドバイスをいただけることが、私にとってはほんとうに大きくありがたかった。1人じゃないと思えたからこそ、今こうやって人と話すこともできるし、会社に行くこともできる。1人だったらたぶんここまで、こんな感じでは生きてこられなかったかな。もっと駄目になっていたと思います。

佐々木:事故の5日後に行われた松永さんの最初の会見を見て、私も「何か支援ができたら」と思っていました。それが今こうやってお話できているのもご縁なのかなと思っています。

松永:こういったいろんな方との出会いも、私の人生にとっては糧となっています。

佐々木:事故直後にご自分が会見に出るのに迷いはなかったですか。

松永:当時、弁護士の先生からマスコミに対して、文章でもいいし代読でもいいし自分で会見に出てもいい、と話があった時に、ほとんど直感で「いや、自分が出なきゃ駄目だ」と。混乱してたから何が何だかわからなくて記憶も飛び飛びで断片しかないんですけど。

 普通の会社員で家族3人ただ静かに生きてきた男だけど、顔を出して現実を知ってもらおうと思ったんですよね。

佐々木:その時、真菜さんと莉子さんのお写真も公開されました。お2人の写真を見て涙が止まらなかったです。自分が絶対加害者になってはいけないとまず思うし、多くの人がいろんなことを感じたと思います。

松永:写真を公開したのも、生きてきた2人のことを知ってもらいたい。それが事故で突然亡くなってしまったんだという現実。こうやって悲しむ遺族を見てもらったら、あおり運転やスピード違反、ながら運転、飲酒運転をしそうになった時、頭に思い浮かんでくれたら、誰かの命が救われるんじゃないか・・・って何となく思ったんです。

 真菜は寡黙だったから、2人でいると私がひたすらしゃべっているような感じだったけど、私は仕事的にもスピーチなんてしたことなかったし人前でしゃべるのは苦手。だから最初の頃の会見なんてひどいものですが、「伝えたい」という気持ちだけでした。

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