松永拓也さんと佐々木成三さん

松永拓也さん(右)、佐々木成三さん(左)。対談は飛沫感染防止シートを設置しマスクを着用して行われた。

佐々木:松永さんのブログなどSNSでもご自分の言葉で「伝えたい」という気持ちがよくわかります。本来だったら感情的になってもいいところではあるけれど、松永さんが発信されているのはそうじゃない。並大抵の意志では続けていけないだろうと敬意を表します。

松永:私はもともとSNSを一切やっていなくて、事故の後もするつもりは全くなかったんです。でも、「あいの会」代表の小沢に「記録をつけておくことが将来の自分のためになる、財産になるから」と勧められて書き始めました。

 そんな習慣がなかったのでなかなか書けなかったのですが、自分の気持ちや経緯など少しずつ書くようになって。多くの人に交通事故の現実や被害者支援のことも知ってほしい、という思いでひたすら書き続けてきたという感じです。

 書いている時は自分と向き合う時間でもあって、それが自分自身の心の回復にもつながっていると思います。全国の方々からのお手紙やSNSを通じてのメッセージで「心から応援します」というお言葉をいただけることはほんとうに救いで感謝しています。

佐々木:一周忌を機に松永さんの実名を公開された思いは。

松永:自分の名前を出すのは批判や非難、好奇の目で見られるのではないかと当初は恐怖心がありました。でも1年たって、たくさんの支援者を得、心の準備や覚悟もできたので、実名を出して交通事故防止活動を続けていく決意をしました。

佐々木:松永さんの現在の生活を伺っていいですか。ご家族で暮らしていた部屋はどうされているのでしょう。

松永:部屋は当時のまま残してあるけれど、やっぱりちょっと住むことはできなくて……。実家で暮らして時々、掃除をしに行ったりしています。いずれちゃんと整理してあげなきゃとは思うんですけど。

 最初は部屋に行くことが全然できなくて。マイナスの方向に心理的に行っちゃうから。その場にいると、会いたいなとか抱きしめたいなとか、こんなことになってなかったら一緒にここで生きていたんだよな、とかどうしても考えちゃうんですよね。そう考えるたびに、変えられないことは考えないようにしようって自分に言い聞かせてマインドセットを変えるんですけど。

 こんなことになる前は、自分の感情なんか自分でコントロールできるよ当然でしょって感じだったんです。でもこの立場になってわかったのは、自分の感情であるからこそ、どうしようもできないというのもあるんだなって。

 最初はそれが駄目だって思っていたんですよ。でも、そうなってしまうのも仕方ない、自分でも許してあげようって思えるようになりました。

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