佐々木:自分が刑事をやっている時にも、ご遺族や被害者の方のお気持ちを感じ取らなくてはと努力してきましたが、実際に経験された方からの情報や支えはとても意味があると思います。官民一体となった支援が必要なんですよね。
そして、松永さんの訴えている問題は、日本の社会の縮図だと思っています。この裁判を通して伝えたいことを改めてお願いします。
松永:交通事故の遺族として体験したからこそ、交通事故をなくしたい。その一環として、高齢ドライバー問題というのは社会問題としてどうしても取り組まなくてはいけない問題だと思っています。
佐々木:松永さんは、高齢ドライバーの問題についてもすごく勉強されていますし、高齢者の方をいじめたいわけではない、免許を取り上げればいいとも思わないとおっしゃっていますよね。
松永:高齢化社会というのは日本の中で喫緊の課題で、これから先も高齢者の運転について悩まれる親族の方が増えていくと思います。
でも現状、地方では車がないと生活できない人が多数いるというのも事実です。そういった時に高齢者の方自身が決断する材料、高齢者を抱える家族が様々な選択ができるような世の中になってもらいたいと思います。
ただ「危ないから返納しろ」と言ったって、そんな単純な話ではないですよね。地方でも車を運転しなくても生きていけるような環境作りや自動車の技術、そういった取り組みをしてほしい、と国に対しても訴えていきます。
佐々木:実際に、国土交通省へ交通事故防止の為の要望書を「あいの会」の方たちと提出したり、内閣府主催の会議に参加するなど行動されていますよね。
松永さんの着地点はこの裁判ではなく、その先の「交通事故をなくしたい、自分と同じ思いをしてほしくない」というブレない信念なのかと感じます。
松永:はい、裁判はいつか終わりが来ますが、交通事故防止活動には終わりがありません。
この1年半変わらなかったしこの先もきっと変わらないのは、「真菜と莉子の命を無駄にしない。2人の命で誰かの命が守られること」という思いです。交通事故の犠牲者を1人でも減らしたい、2人の命が誰かの命を照らすことにつながればと願っています。
【プロフィール】佐々木成三(ささきなるみ)/元捜査一課刑事。現在は一般社団法人スクールポリス理事を務め犯罪防止のための講演を学校などで行う他、被害者・遺族の支援活動、マスメディア出演、企業向けのセミナーや講演会を開催。著書に『優位に立てる「刑事力」コミュニケーション20の術』(小学館)ほか。