ほかにも脱毛、頭痛、せん妄など、報告されている後遺症はさまざまだ。こうしたなか、いま世界中で注目されているのが新型コロナ陽性者の長期的な追跡調査だ。
「新型コロナは、回復して陰性となった後も、多くの人が体調不良を訴えています。陽性者の直近の対応だけではなく、長期的な結果と影響についての分析を世界各国が進めています」(横山さん)
1月18日、英レスター大学と国家統計局が共同で調査した、衝撃的な研究結果が発表された。2020年1月1日から8月31日までの間に新型コロナ感染の診断を受けて入院し、回復したイギリス国内の患者4万7780人(平均年齢65才・男性が55%)を対象にした調査で、29.4%が140日以内に再入院し、12.3%が重篤な心臓病や肝臓病、腎臓病、糖尿病で亡くなっていたことが判明したというのだ。
後遺症として圧倒的に多かったのは、呼吸器疾患の1万4140例。驚くべきは、そのうち6085例は、新型コロナ感染時に基礎疾患がなかった患者だったという。このデータは内科医の研究によるもので、あげられている疾患には、脳などほかの器官のものは含まれていない。
また、時期的に対象となっているのは、イギリスを襲った第1波の患者たちだ。つまり1日の感染者数が5万人を超え、死亡率も高まっていると報じられている「変異株」による後遺症は含まれていない。それにもかかわらず、回復者の3人に1人が再入院を余儀なくされ、そのうちの8人に1人が死亡しているのだ。
今年1月20日に1日の死者数が1734人と、パンデミックが始まって以来の最多を更新したドイツでは、感染後2~3か月が経過した100人の患者に対して、心臓のMRI検査を実施した。
対象は45~53才で、平均年齢49才。感染が確定してからMRI検査までの期間は平均71日で、100人のうち67人は自宅で療養、33人は入院して治療を受けていた。その結果、100人中78人に心臓MRIの画像上の異常が認められ、60人に心筋の炎症が続いていたという。感染から2か月以上経過してもなお、症状の重軽にかかわらず、新型コロナが心臓に影響を及ぼし続ける可能性があるというわけだ。
足、肺、脳に血栓ができる
前出のタイタンの光代社長は田中の入院中の治療について、「医師に聞いたところ病院に着いた時点で動脈解離は治まっていて、血栓も点滴で溶けたそうです」と話している。春日井市総合保健医療センター参事の平山幹生さんが指摘する。
「新型コロナウイルスが急性期に脳の血管に入って血管壁の炎症を起こし、その後に何らかの誘因で解離してしまったかもしれません。すなわち、脳の血管が脆弱になった可能性があります」