否定も強制もしない
ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、本誌連載「ネットのバカ」でも「日本は死者が少ないのにメディアは危機感を煽りすぎではないか」と主張している。中川氏はつい最近、衝撃的な経験をしたという。
「今は佐賀県(唐津市)に住んでいますが、初めて行った床屋の入り口に『県外お断り』の張り紙がありました。入ったら『お客さん初めてですか?』と聞かれたので『はい。でも、唐津市内に住んでいます』と言ったんです。
そしたら『その前はどこに住んでいたのか?』と聞かれて、『東京ですけど、数か月前ですよ』と答えた。だけど、結局、『お客さん、ごめんなさい』と断わられてしまいました。空港の隔離でも2週間ですよ。いい気分ではなかったです。まさに岡田晴恵さん(白鴎大学教授)の名言『人を見たらコロナと思え』そのものです」
それでも、怖がる人がいる以上、公共の場では空気を読まなくてはならないという。
「道の向こうに高齢者を見かけたり、お店に入るときにはマスクをします。怖がる人がいる以上、マスクは“通行証”だと思っています。コロナによる経済の失速から、倒産や自殺が増加していることのほうが大きな問題だと思いますが、今の“空気”は終息するまで変えようがないので、従わなければならない」(同前)
現在80歳のジャーナリスト・鳥越俊太郎氏も、「怖い病気ではありますが、統計上の数字を見ると、ものすごく怖い病気というのは言い過ぎだと思う」とした上で、「もちろん、怖いと感じる人が対策をすることを否定しないし、尊重する」という。
重要なのは、自分の意思と死生観なのだそうだ。
「ユーチューブの番組ゲストにジャーナリストの田原総一朗さんをお呼びしたんですが、2人とも収録を始めた瞬間、ほとんど同時にマスクを外して、1時間半テーブルを挟んでしゃべり続けた。私も田原さんもお互いに、いつ死んでもいいという死生観があると感じたからです。
だからこそ、“コロナは怖い、もっと生きたい”というのも、その人の死生観から出てくるもので、否定したり強制したりするつもりはまったくない。そういう人は、遠慮なく『マスクをしてくれ』と言ってくれたほうがありがたいですね」(鳥越氏)