芸能

山田裕貴の『ここは今から倫理です』 衝撃シーンが問いかけるもの

番組公式HPより

番組公式HPより

 検索すればすぐに正解に辿り着ける時代だ。だが、本当にそうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が異色の作品について考察した。

 * * *
 恋愛ドラマであれば、恋愛が成就するか、破局するのか。医療ドラマなら助けることができるか、できないか。刑事ドラマなら犯人が誰か逮捕できたか、迷宮入りか。おおざっぱにといえば物語はいずれかの「答」に着地し、それを脚本家も役者も演出家もあらかじめ知っています。

 しかし、このドラマは違う。登場する役者も演出家も脚本家も、すべての人が「正解」を知らない。視聴者も一緒になって感じ考え自問する。そんなドラマって他になかなか無い。

『ここは今から倫理です。』( NHK総合土曜午後11時30分)は、「誰も見たことの無い本気の学園ドラマ」とうたうだけあってたしかに異色です。

 原作は雨瀬シオリ氏の同名漫画でアニメ界でも活躍する劇作家・高羽彩氏が脚本を担当しています。舞台は「倫理」の選択授業をする高校の教室。ごく普通の風景に見える教室に現れた倫理教師・高柳(山田裕貴)のたたずまいだけが、どこか違和感を醸し出している。伏し目がちで、ごく静かに抑えた口調。コケた頬、顔が隠れるような前髪。まったくと言っていいほど崩さない表情、黒い衣服。

 この高柳という人、いったい何者? もっと知りたい、本性を見てみたい、という視聴者の好奇心が刺激されます。淡々とクールで謎めいた高柳という教師を、魅力的に浮かび上がらせたのが山田裕貴さん。その役造りは実に見事で、静かなセリフの一言一言が高柳の内側から出てくる。説得力があり、しかし本人は全く熱くならず押し付けもなく。一歩引いた独特な距離感がドラマに一段と深みを出しています。

 高柳は倫理の授業について、はっきりとこう宣言します。

「数学や英語のような実用性もありません。倫理の授業で得た知識が、役に立つ仕事はほぼない。倫理の知識が役に立つ場面があるとすれば、死が近づいてきた時。自分が独りぼっちの時に使うもの」

 そして、こうも言う。「人の心に触れ、自分の心に触れてもらう授業」。

 一見、「倫理や哲学の言葉が出てくるドラマ」と聞くと小難しい内容かと想像するかもしれませんが、そんなことはありません。手持ちカメラでスピード感のある、めくるめく映像と弾丸セリフで始まった第1話。

 衝撃的なのが教室内での高校生同士のセックスシーン。入ってきた高柳はピクリとも表情を変えず、男女に問いかける。

「合意ですか?」

 叱り飛ばすとか校則に反しているとか説教はなし。高校生としてあるまじき行為だとかいう常識も全く問わない。ただ高柳が問題にするのは、「その性交渉は合意ですか?」。

「もし合意なら、本当に深く愛し合ってのせっぱ詰まっての逢瀬なら、時間と場所についての注意だけにとどめます。合意ですか?」

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された愛子さま(2025年5月8日、撮影/JMPA)
《初の万博ご視察》愛子さま、親しみやすさとフォーマルをミックスしたホワイトコーデ
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン