国内

日本の死者数が前年より1.5万人減 コロナ禍の「受診控え」が一因か

(写真/Getty Images)

日本の死者数が前年より1.5万人減(写真/Getty Images)

 北海道・旭川医科大学病院で新型コロナウイルスの患者の対応を巡り「内紛」が勃発。学長と対立し、解任された元病院長が2月1日、大学側に解任の撤回を求める要請書を提出した。

 ことの発端は昨年11月。旭川市の吉田病院で新型コロナのクラスターが発生したことだった。感染者と死者が急増し、地域医療に崩壊の危機が迫るなか、基幹病院である旭川医科大学病院は、頑として吉田病院のコロナ患者を受け入れようとしなかった。

「旭川医大の学長が、『あの病院が完全になくなるしかない』『患者を受け入れるなら、お前(元病院長)が辞めろ』と発言し、患者の受け入れを拒否したと報じられました。患者を受け入れると、感染症対策のため病床の稼働率が下がることを嫌ったとみられています」(地元紙記者)

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。

「新型コロナ患者を受け入れると、病院は感染対策を徹底的にせねばならず、経営リスクを背負い込むことになる。つまり、手術や受診が抑制されるので、“売り上げ”が減ることにつながるんです」

 新型コロナ患者を受け入れていない病院でも高齢者を中心に、コロナ感染を恐れた「受診控え」が発生。日本病院会らの調査によると、回答のあった全国1459病院では昨年4~6月で、利益率が平均10%前後落ち込んだ。

 大病院が患者を受け入れず、通院する一般人も激減するなか、日本では奇妙な現象が発生した。新型コロナ発生後に受診控えが増加したことで、国民の健康状態が悪化し、死者が増えるかと思いきや、逆に死者が減少したのだ。

 1月19日に発表された厚労省の人口動態統計速報によると、昨年1~11月の死者は約125万人で、前年同期比で約1万5000人も減少した。第3波で12月に新型コロナの死者が急増したものの、年間を通しての死者数は11年ぶりに前年を下回るとみられる。

 世界はまったく逆で、アメリカでは昨年3月中旬から11月の死者が、過去の統計などから予想された死者数を約36万人上回った。イギリスの昨年の死者も過去5年間の平均をもとにした推計値を8万人ほど超えた。なぜ、日本では新型コロナ発生にもかかわらず、死者が例年よりも減ったのか。『医者に殺されない47の心得』の著者で、医師の近藤誠さんが指摘する。

「病院で医師の診察や手術を受ける際には、医療ミスや過剰医療によって患者の状態が悪化するリスクがあります。新型コロナで受診者が減ったため、そうしたリスクが減ったことが死者の減少をもたらした可能性があります」

 多くの医師は患者を救うため命がけで治療を施している。しかし、前年比の死者が1万5000人も減ったという事実は、「病院に行かない方が死者は減る」という不都合な真実の可能性を示すものだといえるのだ。

※女性セブン2021年2月18・25日号

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン