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球界名手が振り返る 長嶋茂雄、落合博満、森脇浩司の「鬼ノック」

今なお語り継がれる「鬼ノック」の逸話とは?(時事通信フォト)

今なお語り継がれる「鬼ノック」の逸話とは?(時事通信フォト)

 プロ野球で野手が延々とノックを受け続ける「特守」は、キャンプの時期にしか見られない光景だ。捕球技術の向上に加え、シーズンを戦い抜く体と心のスタミナを培うことが狙いである。

 緊急事態宣言下で行われる今春のキャンプは無観客となったが、球史には伝説として残る地獄のキャンプが存在する。

長嶋茂雄/野手との“一対一の真剣勝負”

 V9達成から6年が経過した1979年10月、第1次長嶋茂雄政権下の巨人は43年ぶりとなる秋季キャンプを開催した。江川卓や中畑清ら、精鋭18人が参加した伊東キャンプだ。

「王(貞治)さんは翌年が現役最終年でしたが、V9時代の選手が次々と引退され、ミスターはジャイアンツの未来を案じていた。“このメンバーがチームを引っ張っていくんだ”という訓示が初日にありました」

 1975年ドラフトで、長嶋が周囲の反対を押し切って1位で指名した篠塚和典はこう振り返る。

 球場脇にある宿舎で寝泊まりし、練習は朝9時半から日が暮れるまで。定位置を確保できていなかった4年目の篠塚は二塁の守備に就いてノックを受け、それが毎日1時間半から2時間続いた。

「普通は緩急をつけたノックをするんですけど、ミスターのノックは、とにかく打球が速かった。私も疲れてくると、どんどんミスターの方に近づいていくんですね。ノッカーとの距離が縮まれば、捕球できる横の距離が短くなり、ボールを追わなくてすみますから。

 すると、ミスターはわざととんでもない方向にノックを打って、ポジションを下げさせる(笑)。長嶋さんと一対一の真剣勝負をやっているような感覚でした」

 翌年、篠塚はセカンドの定位置を確保し、課題だった打撃面でも球界を代表する安打製造機へと成長していく。その礎となったのが伊東キャンプだった。

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