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杉咲花『おちょやん』16%台突入の危機 盛り上がらないのはなぜか

杉咲花の演技に注目が集まっている(時事通信フォト)

杉咲花の演技に注目が集まっている(時事通信フォト)

 朝ドラは放送期間も頻度も比類なき特別な枠だけに、評価はシビアになりがちなのかもしれない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

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 NHK朝ドラ『おちょやん』の人気が今ひとつ盛り上がらないのは、いったいなぜでしょうか? 今週は宝塚歌劇団時代に人気を博し朝ドラ初出演と鳴り物入りで、明日海りおさんが登場。注目が集まるかと期待の声も聞かれましたが、残念ながらさほど火が付いた印象はなさそうです。視聴率の推移を見てみると、20%台に届かず1718を移行していましたが、211日の第49話でとうとう16.4%を記録してしまいました。朝ドラで16%台というのは、かなりの危機的数字でしょう。

 このドラマは「大阪のお母さん」として親しまれた上方女優・浪花千栄子がモデルで、杉咲花さんが主人公の女優・竹井千代を演じています。波乱万丈な女優の人生を描くという太い背骨がしっかり通っている物語なのに、なぜ今ひとつ反響が少ないのでしょう?

 第10週は「役者辞めたらあかん!」。4年ぶりに道頓堀に戻った千代は新たな劇団に参加。メンバーは旧天海一座に歌舞伎、新派、歌劇団などさまざまな役者。座長は一平(成田凌)。さらに喜劇役者の実力者・千之助(星田英利)が参加し、即興で客を笑わせ評判をとるが……。

 喜劇劇団が舞台ということもあって、観客たちが大口を開けてどっと笑うシーンが繰り返し流れていますが、お茶の間の視聴者の方はどうでしょう? 笑いの渦が湧き起こっているでしょうか。

「これって本当に喜劇?」「毎朝のようにドタバタ喜劇のシーンを見せられてうざい」「腹を抱えて笑うほど面白い?」という視聴者の感想がいくつも目に留まります。

 つまり、ドラマの制作側は楽しんでドラマを作っていて役者たちも面白いと思いながら演じている、そんな「熱」のようなものは伝わってきますが、視聴者との間にどこか溝がありそう。作り手側が「ほら面白いだろ」とばかり、画面の中が異様に盛り上がって大騒ぎをすればするほど、視聴者サイドの熱はすっと引いていく。そんな「ミスマッチ現象」が起きているのかもしれません。

 主人公の評判はどうでしょうか? 

 演技に定評がある若手女優・杉咲花さんが千代を演じていますがどうにも一本調子で、まくし立てたり啖呵を切っている印象が強いようです。

「いつも甲高い声張り上げて怒鳴り散らしている」「大阪弁の怒鳴りあいが不快」「うるさいのが喜劇と勘違いしている」といった感想を見ると、千代の中に人間の弱さや繊細さが希薄で、人生の浮き沈みと陰翳、迷いや悩みといった複雑さが足りないことが、盛り上がらない一因と言えそうです。

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