国内

「五輪は中止せよ」と明確に書かない五輪スポンサーの大新聞

大新聞は史上初めてオリンピックのスポンサーになった(時事)

大新聞は史上初めてオリンピックのスポンサーになった(時事)

 先進国で一番遅れているワクチン接種、東京で続く緊急事態宣言、そして森喜朗・会長の女性蔑視発言。どう見ても東京オリンピック・パラリンピックの開催は難しくなっていると思えるのだが、いまだ新聞やテレビなど大マスコミからは「中止せよ」という報道はほとんど出ていない。せいぜい識者や元アスリートに取材して「難しいのではないか」といった意見を載せるくらいだ。

 その原因は、大マスコミが雁首揃えて五輪スポンサーになっているからではないか。朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞は「オフィシャルパートナー」、産経新聞、北海道新聞が「オフィシャルサポーター」に名を連ね、すでに数十億円のカネを出している。当然、その系列のテレビ局も親会社の顔色をうかがって「中止せよ」とは言いにくくなる。

 海外では、すでに「東京五輪は無理」という報道があふれている。各メディアや識者の意見としてはもちろん、なかにはイギリスのタイムズ紙のように、日本の与党幹部の話として、「日本政府が非公式に中止と結論づけた」と、日本での取材に基づいた報道もある。本来なら、こうした記事は国内メディアこそ書くべきものだ。おそらく「オフレコ懇談」では政府・与党からそのような話を聞いているのだろうが、書けない。もともと日本の大手メディアは政府や与党の言いなりになる傾向があるとはいえ、こと五輪に関しては自分たちのビジネスも絡むから、ますます筆が重くなるのではないか。

 北海道新聞、高知新聞の元記者で東京都市大学メディア情報学部教授の高田昌幸氏は大新聞が五輪スポンサーになったことで報道の現場にも「忖度」が及んでいるのではないかと指摘する。

「スポンサーになることで新聞社内で何が起きたか。まず各社にはオリンピックを担当する専門部署ができました。『ビジネス面でオリンピックにどう関わるか』の実務的な司令塔であり、事務局や広告局といった部署が加わっています。しかも、そこには昨日まで編集局の幹部だったような人たちもいて、現場に向けて、『盛り上げる記事を頼むぞ』などと普通に言うわけです。現場の記者たちは忖度もするでしょう。そんななかで、例えば湯水のように税金が使われている五輪予算について、きちんと取材して問題点を明らかにしていく報道ができるでしょうか。非常に疑問に思います。社内のオリンピック対応部署の幹部たちが昨日までの上司や先輩なのだから、そういう人間関係のなかで公正な報道ができるのか、問題点を掘り起こす取材に乗り出せるのか。巨額の税金をつぎ込むイベントであるにもかかわらず、報道機関がスポンサーになったことによって、営利目的のビジネスが報道の論理を食い尽くすようなかたちを社内に抱え込んでしまったのだと思います」

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン