「まず、語られる内容の証拠が残りません。それにスピーカーたちが盛り上がる中、割って入って話の内容を否定しにくい空気がある。誰でも入れるトークルームでも『今ここにいる人たちだけが聞ける』といった選民感や特別感が出せる。TwitterやFacebookの場合は文字が残るので、後から事実関係を調べたうえで『医学的根拠がない』『健康被害につながる』『マルチ商品だ』などの指摘ができますが、Clubhouseはそれができません。
私の元には、問題のあるトークルームについての情報がいろいろ寄せられるのですが、あるトークルームでは、リスクの高い出産法が称賛されていたそうです。幸い、その場に偶然居合わせた医師がトークに参加し、危険な点もあることを説明できたのですが、もしそのままになっていたら……? また、『親が性器のケアをしたら、子どもの引きこもりが改善した』という因果関係のわからない話で盛り上がるルームもあったそうです」(山田氏)
では、インターネットを通じて健康情報を調べる場合、どんな点に注意するべきだろうか。
「以前より、SNSでは『口コミ』といった体でさまざまなデマが広がりやすくなっています。拡散力の高いインフルエンサー的な人が語る体験談であれば、なおさら信じる人は多いでしょう。
『〇〇だけで治る!』といった単純な解決法を謳う健康法は、デマである可能性が高い傾向があります。情報収集する場合は、書かれたものを鵜呑みにせず、その根拠をしっかり調べましょう。もちろん、個人の体験談だけを根拠としてはいけません。また、おかしな情報を流す医師もいるので、『医師監修』というのも油断なりません。その医師がどんな著作を出しているか、などをしっかりチェックした上で判断しましょう」(山田氏)
なお、今回は健康デマをメインに取り上げたが、健康情報に限らず、政治思想などにおいても偏った情報に触れてしまう危険があるだろう。Clubhouseを通じて陰謀論に染まる可能性はゼロではない。どんな分野を調べるにしても、良い意味で半信半疑の姿勢を保つことが大切だ。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)