スポーツ

最後のGIに挑む角居師「156回目のファンファーレ」【さらば愛しき競馬vol.12】

角居勝彦調教師

角居勝彦調教師

 現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は自身最後の挑戦となるGIレースについて言及した。

 * * *
 今週は東京開催最終週。今年初のGⅠ、フェブラリーステークスが行なわれます。

 思えば長い間、多くのGⅠに出走させていただきました。JRAのGIはこれまで26勝していますが(注・現役2位)、出走したのはのべ204頭。2頭以上出走しているレースがあるので、これまでGⅠのファンファーレを155回もドキドキしながら聞いていたことになります。

 初めてのGⅠは開業した2001年の阪神ジュベナイルフィリーズ。社台グループの会員に支えられたシェーンクライトという馬です。父は1996年の凱旋門賞を勝ったエリシオで、引退後種牡馬として輸入され、この世代が初年度産駒でした。

 扱いが難しい馬でしたが、能力があって7月に小倉の新馬戦を勝ちました。角居厩舎としての開業5勝目ですが、それまでの4勝は引退された二分久男先生から受け継いだ馬ばかり。角居厩舎“生え抜き”として最初に勝ってくれたのがこの馬です。続くオープンのフェニックス賞も勝って賞金を積み上げ、暮れの2歳牝馬チャンピオン決定戦に駒を進めることができました。鞍上はデビュー6年目にしてすでにGⅠジョッキーとなっていた福永祐一騎手でしたが、休み明けということもあって18頭中10着でした。

 次のG1もシェーンクライト。2年目でクラシック桜花賞に駒を進めることができましたが15着。その次のGⅠは同じ年のNHKマイルカップに金子真人オーナーのエンドレスデザートが出て18頭中18着。この2つのGⅠ、桜花賞とNHKマイルカップはその後も勝つことができませんでした。初めて勝ったのは2004年の菊花賞、GⅠとして5戦目のデルタブルースで8番人気でした。

 オリンピックは参加することに意義があるかもしれませんが、競馬のGⅠは勝たなくては意味がない。もちろんどんなレースでも勝つことを目標していますが、デビュー戦は走らせてみないと分からないことも多いし、昇級初戦などは課題が見つかることも多い。また、故障などで長期休養明けだったりするととりあえず無事に、などと思うことはあります。しかしGIは万難を排してそれまでの課題を克服し、「次」を考えずギリギリまで仕上げます。だから勝たなくては意味がない。勝てる自信がなければ出走させることもありません。

 角居厩舎として正真正銘最後のGⅠ、フェブラリーステークスにワイドファラオを出走させます。

 この馬は芝でデビューして3戦目で勝ち上がった後、2019年のGⅡニュージーランドトロフィーに出走。ハナを切りながらも脚をタメる競馬で、直線では他馬を引き離して勝ちました。2002年以来17年ぶりに出走したNHKマイルカップでも9着ながらコンマ4秒差に頑張ってくれましたが、その走り方からダートでこそと思っており、1か月後にGⅢユニコーンステークスに出走させました。やはり逃げる形になり、直線で捕まりかけましたが、またひと伸びして勝ってくれました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン