その後、高校を卒業し都内の大学に進学した頃にはギャルを卒業。真っ黒に焼いていた肌は、日焼けに気をつけながら白くさせ、就職を機にメイクも薄目にし、大人っぽく変えた。するとやはり気になったのは「シワ」であった。
「就職した会社で、シワのことについて同僚女性から『老けて見える』と指摘されました。ギャルメイクみたいに厚塗りで誤魔化すこともできず、結局美容整形をしました。手術ではなく注射を使う、簡単なやつですね」
元々「美容整形」には抵抗があったと語る星野さんだったが、ほうれい線注射のあと、その簡単さで心理的なハードルが下がると、目の二重手術や顎、眉間、歯と30才までに計800万円以上を注ぎ込み、整形手術を施した。「やりすぎない方が良い」と忠告してくる友人もいたが、自分が納得をしているのだと言い聞かせ、実家に帰ると「顔が変わった」と母親から心配そうに言われるため、帰省もゼロになった。
「私自身、整形をしても以前とそんなに変わったとは思っていません。でも周りは『変わった』とか『やり過ぎ』と言う。まあ、私がいいんだからそれでいいじゃん、って感じでいると、周囲から人が去っていきました。当時お付き合いしていた男性からも、もう見ていられないと言われ振られました。それでも、自分が納得できるようにやりたかった」
そんな時に出会ったのがSNSである。SNSといえば「ミクシィ」を少しやっていたくらいだったが、ブログやツイッター、フェイスブックのアカウントを取得し、自分の写真をアップしたところ、見ず知らずの人々が、自分の写真に「いいね」を押してくれた。「かわいい」「綺麗」とコメントを残してくれる人もいた。現実世界では、星野さんの行動に否定的な人しかいなかったのに対し、ネット上、とりわけSNSで繋がっていく人たちは、星野さんの顔や写真を肯定する。SNS上の「仮想自身」という、もう一人の自分に出会ったような気がした。
「いつの間にか、ネットの中の自分が本当の自分だと思うようになってきて、現実の方が『仮の姿』と思うようになりました。そっちの方が楽だったから」
30代も半ばに差し掛かってくると、以前にも増してシミやシワが目立ち始めてきたが、もう整形はしないと断言する。
「スマホで写真を撮って、肌を白くして、顔の形を整えてって加工している時が一番楽しい。理想の自分になれますからね。整形もしたい気持ちはありますが、リアル世界ではちょうどコロナでマスクが欠かせなくなったし、化粧するのは目だけでいいし。リアル世界のために整形でがんばるより、加工の方が盛れる。整形はもうやんないでしょうね」