その二階氏の“悲願”が延期されている習主席の国賓訪日の実現だ。外務省関係者の話である。
「2022年は日中国交正常化50周年にあたり、コロナ収束を前提に様々な交流行事が行なわれることになる。二階さんや中国側はそれに合わせて習主席の訪日を実現させたい。その年2月には北京冬季五輪の開催もあり、二階さんが訪中し、習主席訪日を要請する首相親書などを持っていくシナリオも検討されている」
二階氏は昨年末に開かれた北京・東京フォーラムに「東京五輪、北京冬季五輪・パラリンピック及び日中国交正常化50周年といった重要活動を順調に迎えることを心より願っている」とメッセージを寄せるなど50周年を非常に重視している。
欧米では、中国政府による少数民族への人権侵害を問題視した国会議員らから、北京五輪ボイコットの議論まで出ている。なりふり構わず中国に追従しようとする日本とはあまりに違っている。
さすがに自民党からもそうした媚中外交を批判する声が上がり始めた。外交官出身の城内実・元外務副大臣が語る。
「中国が覇権主義や人権問題についての姿勢を変えないまま、国交正常化50周年のお祝いだからと習主席を国賓として迎えるなんてとんでもない。それこそ日本が国際社会に間違ったメッセージを与えることになる。国賓招聘を中止すべきです。
私は外交官としてドイツに10年赴任し、ドイツの歴史を調べた。現在の中国は、1939年にポーランドに侵攻する直前のナチスドイツに似ている。一党独裁で軍事力の牙を持ち、覇権主義で米国との戦争も視野に入れている。そんな中国に甘い顔をすれば、日本は利用されるだけ利用されて蹂躙されるでしょう」
城内氏が代表世話人を務める「保守団結の会」は菅政権発足直後に「日本国民をこれだけ苦しめた習近平氏の国賓招聘など笑止千万」という対中政策の根本的な見直しを求める決議を提出したが、菅首相も二階幹事長も“黙殺”したままだ。
まだワクチン接種をはじめとする感染対策が十分でないうちにビジネス往来の再開などで海外との人の行き来が活発になれば、それが感染「第4波」を招きかねない。国民の生命と安全を危機に晒す外交政策に国の行く末を託せるはずがない。
※週刊ポスト2021年3月12日号