芸人にとって、客の笑い声は「ガソリン」だ。ガソリンを給油することで、勢いを持続することができる。つまり、無観客でやるということは給油なしでレースに臨むようなもの。それはさせられなかった。そのため、今年は客を入れられることを最優先に会場を選定。R-1史上初めてのクールジャパン大阪で開催されることになった。
今大会は客の笑い声が戻って来て、芸人もその声に乗って行った。その中で、いちばん大きな波に乗ったのは、5回目の出場で悲願の初優勝を飾ったゆりやんレトリィバァだった。
塩見にはもう1つ、実現したいことがある。
「R-1で優勝した芸人が、その後、あんまり活躍してないと言われることが多い。これまではお祭りっぽくやっていたから王者感がなく、ふさわしい扱いをされなかったのかなとも思う。なので、チャンピオン感の出る大会にしていきたい」
R-1は確かに生まれ変わった。そして、新生R-1にふさわしい王者も誕生した。ただ、ひとつ誤算だったのは、今大会の王者はすでに売れっ子だったことだ。王者をお笑い界のスターに──。その宿題だけは、来年以降への持ち越しとなった。
※週刊ポスト2021年4月2日号