『えのないえほん』
斉藤倫・作 絵・植田真 (講談社)
醜くて孤独なケモノと、盲目の少女。2人の出会いから別れまでを描く。
「少女がいなかったら人を憎み、人を遠ざけてこの世にひとつもいいことなんてないと思って、生涯を終えたであろうケモノが、ひとりの少女との出会いによって、魂が救われます。現実でも、悲しみに寄り添い自分を認めてくれる誰かがいるだけで、生きる力になりますよね」
『ガラスのなかのくじら』
トロイ・ハウエル&リチャード・ジョーンズ・著 椎名かおる・訳 (あすなろ書房)
街中にある水槽の中で生まれ育ち、水槽以外の世界を知らなかったクジラが、本来の居場所を知り、戻っていく。
「“本当の自分の居場所はどこか?”を問いかける絵本。私たちはひとつの環境に慣れてしまうと、その世界がすべてになりがち。だけど、この物語は希望に満ちあふれ、行動に移せる可能性を教えてくれます。潜在的なものを揺さぶられる一冊」
『ここで土になる』
大西暢夫・著 (アリス館)
熊本県の五木村の変わりゆく風景を写真で追ったドキュメンタリー絵本。昭和30年代に浮上したダム建設の計画で村人が去った中、1組の老夫婦だけが樹齢500年以上の大イチョウとともに残る。
「私の父方の故郷は新潟の里山にあり、そこが原風景。この本を読むと思い出され、『早く帰りたいな。みんな元気かな』と、涙せずにはいられません」
『むこう岸には』
マルタ・カラスコ・作 宇野和美・訳 (ほるぷ出版)
川を挟み、2つの村がある。同書は、“こちら側”に住む少女の目線で展開され、やがて向こう岸に住む《わたしたちとはちがう》少年たちと交流するように。
「いろんな人がいていろんな経験、悲しみがある。私たちは、すべての人の立場に立って同じような思いを抱くことは難しいけれど、考えてみることはできると思わせてくれます」
※女性セブン2021年4月8日号