国内

暴力団取材のプロが提起「ヤクザは生き方なのか、職業なのか」問題

令和時代のヤクザ社会を追い続ける鈴木智彦氏

「ヤクザ」は生き方か、職業か…取材を続ける鈴木智彦氏

 元ヤクザを描いた映画『ヤクザと家族』『すばらしき世界』が立て続けに公開され、またNHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』では、主人公の弟がヤクザになる様子が描かれている。しかしそもそもヤクザとは何なのか、職業と呼べるモノなのか、どうやって生活しているのか。

 溝口敦氏との共著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)を上梓したフリーライターの鈴木智彦氏が、そうした疑問に答える。

 * * *
 暴力団を専門に扱う『実話時代』という月刊誌編集部に在籍していたころ、編集業務に加えて原稿も書くようになり、「ヤクザは職業ではない。生き方だ」というパワー・ワードを多用しました。その割にヤクザは事務所を持っているし、看板を使って稼ぐので矛盾するのですが、ヤクザの自尊心をいたくくすぐるらしいのです。

 読者を酔わせるセンテンスでもありました。私が編集長となった『実話時代BULL』はクロスワード・パズルの懸賞が読者アンケートの釣り餌です。

「解答の他に、今月の本誌でおもしろかったものを二つ、順番に、また、感想も忘れずお書き下さい」

 と注釈があるので、みなハガキに気に入った企画を書いてきます。このパワー・ワードを使うと、決まってトップを勝ち取れました。決め台詞は誰が言ったかも重要なので、ぬかりなく現役のヤクザの口を借りました。何度使っても効果が目減りしないので、他のライターが担当するインタビュー原稿でも、編集方針としてそう言わせるように指示します。金で動かず、道理で引かず、命の殺り合いになっても男を曲げない……美学の実践こそヤクザの道を極める“極道”だと匂わせ、浪漫を呼び起こすわけです。娯楽としてのヤクザ読み物はファンタジーなのです。

 作家・子母澤寛は「やくざものは面白ければいい」と断言しています。当時はまだ、子母澤の価値観がかろうじて社会に通用した時代です。ヤクザは嫌われ、恐れられてはいても、同時に愛すべき隣人でした。

 極東会(新宿歌舞伎町に本部を置く指定暴力団)の大派閥である眞誠会には『限りなき前進』という機関誌の編集をしていた親分がいて、よく訪問しました。本部のあるビルはパン屋さんの組合が大家さんです。試食品なのでしょうか、事務所に原稿を持っていくと、ときどき焼きたてパンのいい香りがする。牧歌的で、今風に言うならエモい光景のおかげで、脳内でしっかりパンとヤクザが紐付けられました。今も運転中にパン工場のそばを通りかかると、その匂いで組員や親分を思い出します。

暴力団の時価総額を決めるもの

 ヤクザは職業ではない……そういっても一面の正しさはあります。一般人の多くは誤解しています。暴力団は、犯罪を直接の業務にする組織ではないのです。会社のように利益を生み出すために一丸となって分業し、活動していません。そもそも組織に金を払っても、金はもらえません。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン