京都市民を悩ませていたオーバーツーリズム問題

 では、コロナ禍以前の京都市の観光実態、街の様子はどうだったか、振り返ってみよう。

 京都観光総合調査結果によると、2019年の観光客総数は5352万人。7年連続で5000万人超えとなった。ちなみに京都市の人口は約140万人である。人口のなんと38倍の観光客が訪れていたことになる。

コロナ前は880万人超の外国人が京都を訪れていた(祇園白川/時事通信フォト)

コロナ前は880万人超の外国人が京都を訪れていた(祇園白川/時事通信フォト)

 これでは、人気スポットが外国人観光客や日本人観光客で大混雑するのも当然だ。年間の外国人観光客数は886万人で、前年に比べ約10%も増加していた。外国人の観光消費額は3318億円に達し、全体の27%を占め、単価は3万7000円超で日本人客の1.85倍にもなっていた。

 一方で、オーバーツーリズム(観光公害)問題が至るところで表面化した。市バスの混雑、交通渋滞、舞妓さん無断撮影、ごみのポイ捨て、早朝・深夜の騒音……。そして町家やマンションが、次々に簡易宿所に変わっていった。

かつてはインバウンドで賑わっていた京都駅構内の観光案内所(筆者撮影)

かつてはインバウンドで賑わっていた京都駅構内の観光案内所(筆者撮影)

 さすがに京都に暮らしている人々の間にストレスが溜まっていった。祇園地区では、地元の自治組織が「私道での撮影禁止」という看板を設置した。観光客のマナー違反にたまりかねての警告だった。住民とインバウンドの関係がギクシャクし、オーバーツーリズムが大問題となっていたバルセロナの二の舞になるのかと懸念されたこともあった。

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