ライフ

政府が使用促進を強めるジェネリック薬 トラブル続出の負の側面も

aa

何気なくジェネリックにすれば健康を損なう可能性も(写真/GettyImages)

 寒さと新型コロナウイルスが猛威を振るう2020年12月、70代と80代の男女が相次いで亡くなった。死の背景にあったのは病院から処方された「薬」。ジェネリック医薬品製造メーカーの「小林化工」が製剤した爪水虫の治療薬に、睡眠導入剤の成分が混入していたという前代未聞の事件だった。

 3か月後、今度はジェネリック医薬品国内大手の1つ「日医工」に業務停止命令が下った。理由は、10年にわたって国から承認されていない手順で、不正に薬剤を製造してきたというもの。都内在住の会社員・田村和子さん(52才、仮名)がため息をつく。

「テレビでもジェネリック医薬品のCMをよく見かけるし、薬局では『値段は安いけれど成分は先発医薬品と同じ』と説明を受けていたから、言われたとおりにジェネリック薬にしていました。ですがこうした事件が立て続けに起こると不安になります。このままのみ続けていいものか……」

 医療費削減の観点から、これまでジェネリック薬の使用は国をあげて推進されてきた。しかし厚生労働省が掲げてきた使用割合を8割とする目標もほぼ達成したいま、信頼が揺らぎ始めている──。

 後発薬とも呼ばれるジェネリック薬はその名のとおり、新薬の有効成分についての「物質特許」期間の満了後に発売される低価格の医薬品だ。先発薬と同じ有効成分を持ち、そのため効能や効果も原則として同一とされており、各種医薬品メーカーが厚生労働省の認可を得て製造販売を行っている。

 しかし問題となったジェネリック薬は、どちらも国の承認を得ていない工程で薬が製造されていた。相次ぐ不祥事の理由はどこにあるのか。医療問題に詳しいジャーナリストの鳥集徹さんが指摘する。

「背景にあるのは、先発薬と比較してジェネリック薬の売り上げが小さいという問題です。一般的に薬の開発には巨額の投資が必要で、1つの薬を世に送り出すのに数百億円以上をかけることも珍しくありません。

 そのコストを回収し、さらに利益をあげるために、10年程度の独占販売が許され、薬価も高くつけられています。一方で特許が切れた後に販売されるジェネリック薬は開発に先発薬ほどお金をかける必要がないので、薬価が安く設定されます。そのため先発薬ほどの利益は出ず、試験や品質管理に充分な予算や人員をかけようという意欲が起こりにくい。それが不正を招いた要因の1つにあると思います」

 日医工は、出荷時の試験で「不適合」となった、破棄すべき錠剤を砕いて再び加工し直したりすることで、適合品として出荷していた。

「小林化工の製造工程においても、原料の計量など本来は2人1組で指さし確認をしながら実施すべき際に担当者1人で作業するなど、不適切な管理体制が明らかになった。

 こうした不祥事は社内で隠蔽されれば外部にはわからない。日医工の問題は2020年2月に本社のある富山県の担当者が抜き打ちで立ち入り調査を行い問題が発覚したが、見落とされてしまえば人体に悪影響をおよぼす薬が出回ってしまうことになります」(都内調剤薬局の薬剤師)

 つまり、医薬品メーカーの信頼度や安全性に加え、国や自治体のチェック機能も問われている。しかしそれも万全とはいえない現実がある。

「2016年以降、医薬品メーカーには定期的に抜き打ちでの調査を行っているが、このような問題が起きた以上、不充分だったと言わざるを得ない。抜き打ちでの査察以外にどうしたら不正防止になるのかを現在検討している最中です」(厚生労働省担当者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト