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バイデン政権の本音は「アジアの安全保障は日本に任せる」

アジアの安全保障まで手が回らないバイデン政権(EPA=時事)

アジアの安全保障まで手が回らないバイデン政権(EPA=時事)

 菅義偉・首相は、いよいよ今週ワシントンを訪れ、バイデン大統領と初の首脳会談を行う。アメリカ政府もこの会談を重視しているとされるが、それは東アジアにおける日本の役割を、さらに拡大させたい思惑があるからだ。

 菅首相は昨年10月、就任後初の外遊でベトナムとインドネシアを訪問した。日本の総理大臣は初の外遊ではアメリカを訪問する例が多く、コロナや大統領選挙があったとはいえ、これは異例のことだった。実はその時すでに、日米の新しい関係が動き出していた。

 菅氏の2か国歴訪の直後、ワシントンで日本通として知られているマイケル・グリーン氏が論文を発表した。同氏は、ブッシュ政権でアメリカ国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長などを歴任し、当時からアーミテージ国務副長官、ジェイムズ・ケリー東アジア・太平洋担当国務次官補とならぶ「知日派(ジャパン・ハンドラーズ)」と称された。安倍晋三・前首相とも懇意で、長く日米両政府のパイプ役を務めた人物だ。

 アメリカでは、菅首相の訪米を前に、このグリーン論文が改めて注目されている。グリーン氏は菅氏のアジア歴訪について、「アメリカの政策立案者は、日本がアジア外交を重視する姿勢に不満を抱いていた時期もあり、日本でも菅外交は『脱米・入亜』だと指摘されるだろうが、実際には菅外交によって、伝統的なアメリカの『ハブ・アンド・スポーク同盟システム』が良い方向に変わりつつある」と指摘した。簡単に言うと、アジアでの同盟において、アメリカが中心(ハブ)となり、それぞれ2国間の関係(スポーク)を築いてきた関係が、日本を中心とする多国間同盟へと変化しつつあるという分析である。

 グリーン氏も指摘しているが、1990年代までは、アメリカはハブ・アンド・スポークの維持を日本に求めていた。しかし、軍拡を続ける中国がインド・太平洋への進出を進めたことでアメリカ政府の方針は変わりつつあり、日本のような主要同盟国が地域のハブとなって中国の進出を抑え込むことが重要視されるようになっているとされる。

 グリーン氏は、菅氏がベトナムと防衛品の輸出協定を結んだことに注目し、インドネシアやタイとも同様の協定を準備していることを指摘している。すでに日本は、防衛品輸出については、マレーシアやフィリピンと協定を結んでいる。特にフィリピンに対しては、レーダーシステムの提供や沿岸警備隊の増強に対する資金的な支援など広範な協力に踏み込んでおり、東南アジアにおける安全保障のハブとしての地位を強化している。グリーン氏は論文で、「日本の強みは、東南アジアとの外交が多面的なことである」としている。安全保障で同盟関係を強化すると同時に、コロナ対策や経済支援、インフラ投資などで各国と強固な関係を築いていることを評価しているのである。また、グリーン氏は日本が各国に「中国なのか日本なのか」あるいは「中国なのかアメリカなのか」といった踏み絵を迫らないことで、地域の対立を避けていることも功を奏したと分析した。

 菅氏はアジア歴訪から帰国するとすぐに、来日したデービッドソン米太平洋軍司令官と会談した。この会談で両氏は、中国の海洋進出について、「深刻な懸念と強い反対の意」を表明している。これは、アジア歴訪が日米両政府の合意のもとに行われたことを示唆しており、グリーン氏によれば、「日米がより平等なパートーシップに向けた進化を歓迎することを示す明らかな兆候」だったという。

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