ビジネス

新疆ウイグル人権問題 関与が疑われる「日本企業14社」の苦慮

新疆産の綿を使っているかどうかについて「ノーコメント」と発言したファーストリテイリングの柳井正会長(時事通信フォト)

新疆産の綿を使っているかどうかについて「ノーコメント」と発言したファーストリテイリングの柳井正会長(時事通信フォト)

 中国政府が新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル人を強制収容所に送り、強制労働などの弾圧を続けている人権問題について、日本政府は中国に「NO」と言えない状況が続いている。だが、これは政府に限ったことではない。日本企業も中国に対して「NO」と言えず窮地に立たされているのだ。

 世界の首脳に先駆けてバイデン大統領との会談に臨んだ菅義偉首相は、大統領から出された“宿題”への回答に苦慮していることだろう。

 今回の訪米では「安全保障」「気候変動」「経済協力」の3分野で共同文書を発表することが事前に明らかにされていたが、どの課題もすぐに回答の出せるものではない。が、それ以上に菅首相が頭を抱える難題が「対中政策」だ。

 中国政府が新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル人を強制収容所に送り、強制労働などの弾圧を続けている問題について、日本政府は煮え切らない態度を取り続けている。

 各閣僚も「人権状況については深刻に懸念」(加藤勝信・官房長官)、「(欧米と)考え方は完全に共有できている」(茂木敏充・外相)と表明するのみで、ウイグル人弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した米国とは温度差がある。G7の中で対中制裁に加わっていないのは日本だけだ。

 いくらバイデン大統領から「制裁に参加せよ」と要求されても、親中派の二階俊博幹事長や公明党への顔向けもあり、軽々と「反中」へ舵を切ることはできない。

疑われた日本企業「14社」

 こうした政府の姿勢は、日本を代表する企業トップの判断にも影響を及ぼした。

 ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長は、4月8日の記者会見でウイグル問題について問われると、「人権問題というより政治問題であり、われわれは常に政治的に中立だ」と表明。新疆産の綿を使っているかどうかについても「ノーコメント」とし、曖昧な態度に終始した。

 3月末にはスポーツ用品大手・アシックスが中国のSNS「微博」上で、「(台湾を中国の一部分とみなす)一つの中国原則を堅持」し、「中国の主権と領土を断固として守る」という声明を発表。その後、過剰な中国擁護が批判されると声明を取り下げ、釈明する事態となった。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン