ライフ

「このミス」大賞の新川帆立さん 現役弁護士だからこそ書けないこと

東大法学部卒の現役弁護士という肩書も話題

東大法学部卒の現役弁護士という肩書も話題

【著者インタビュー】新川帆立さん/『元彼の遺言状』/宝島社/1540円

【本の内容】
 宝島社主催の第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作(原題は『三つ前の彼』)。今回から最終選考委員に加わった瀧井朝世さんは単行本の巻末に収録された選評でこう評価している。《ぶっちぎりで面白かったです。奇妙な遺言状の内容はもちろん、とにかく主人公の人物造形に魅了されました》。数百億円ともいわれる財産を残して亡くなった森川栄治。その遺言状は奇妙で、自分を殺した犯人に財産を譲るというもの。その財産をめぐる争いに、代理人として参加するのが主人公の剣持麗子。遺言状の謎、新たなる事件、そして一癖も二癖もある森川家の面々とのやり取りなど、ページを繰る手が止まらない。

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」──インフルエンザで死んだはずの製薬会社の御曹司が奇妙な遺言状を残していた。2021年の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作は、敏腕女性弁護士が、依頼人の無実を明かすのではなく依頼人を犯人にするべく奔走する、ミステリーの定石の逆をいく怪作だ。すでに20万部を超すベストセラーになり、シリーズ化も決まっている。

 女性主人公・剣持麗子のキャラクターがぶっ飛んでいる。美人で気が強く、有能だが思ったことを何でも口にして周囲と摩擦を起こす。「よくもカルティエでこんなに小さなダイヤが買えたわね」と婚約指輪を恋人に突き返し、ボーナスの額が少なければ、「こんな事務所、辞めてやる」と上司にブチ切れる。

 作者の新川帆立さん自身も弁護士で、東大大学院を出て1回で司法試験に合格したそうだ。麗子みたいな人が来たらどうしようと少し緊張しながら取材の場に赴いたところ、

「私も弁護士ですけど、言いたいことがあまり言えない、麗子とは真逆のタイプです。こんな人になって一日過ごしてみたら、いいだろうな、という気持ちで楽しく書きました」

 とおっとりした口調で言われてホッとした。

「女性が憧れる主人公を書こうとして、それなら強い女性だろうと思ったんですけど、ドラマに出てくるような強いキャリアウーマンってあんまり現実味を感じられなかったんです。こんな人いないよね、って思っていたので、麗子はもう少し、いいところも悪いところもあり、悩みも抱えた、多面的な人物造形を心がけました。ミステリーとしての謎解きも大事だけど、ひとりの人間の成長を最後まできちんと書こう、というのを目標にしました」

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン