10周年にあたり、変わったこと、変わっていないこと

――ちなみに、初めてマンガを描ききったのはいつ頃ですか?

オカヤイヅミさん

初めて最後まで描きあげたのは、蟹を食べるだけのマンガ

オカヤ:いつだろう? 大学生の頃、友達の同人誌に描いた8ページのマンガがあるんですけど、それが初めてだと思います。『蟹』というタイトルで、蟹を食べているだけのマンガ。その時、マンガを描くのは8ページでもすごい大変だと思った記憶があります。

 私の中にはさらっと描けるのがうまい人というのがあって、自分はウジウジ時間をかけて描いているわりにつまんねえなと。けど、中年になって自意識が飛んだのか、最近は描けばいいじゃんという感じですかね。相変わらずゲラを読むのは嫌だし、出版されてしばらくは読み返さないですけど。

――デビューから10年経って、その部分は変わらずですか?

オカヤ:そうですね。しばらく経てば面白いと思えるようになるんですけど、もう本当に嫌ですね。

――マンガは大変と思いながらも描き続けた10年ですよね。オカヤさんを創作に駆り立てたものって何だったんでしょう?

オカヤ:駆り立っているんでしょうか?(笑)

――駆り立っていない?(笑)

オカヤ:それこそ何か理由がなくても描いていいんじゃないかと。あとは、依頼していただいてありがたいなって気持ちは常にありますね。

『いいとしを』。バツイチ、アラフォーの灰田俊夫は、母の死をきっかけに東京都下に住む70代の父・実と同居することに。引き出しの中から、母が遺した500万円を見つけた俊夫は何に使うか頭を悩ませるが……。2度目の東京オリンピック、コロナ禍と揺れる世界での男2人の生活は、淡々と続いていく。

(あらすじ)バツイチ、アラフォーの灰田俊夫は、母の死をきっかけに東京都下に住む70代の父・実と同居することに。引き出しの中から、母が遺した500万円を見つけた俊夫は何に使うか頭を悩ませるが……。2度目の東京オリンピック、コロナ禍と揺れる世界での男2人の生活は、淡々と続いていく。

――オカヤさんの作品は視点が独特ですよね。でも、理解できないとかではなく腑に落ちる。

オカヤ:クリシェが嫌い、紋切り型が嫌いというのはずっとあるかもしれません。でも、常套句は絶対に使わない!とかではないんです。あと、なるべく正直にと思っています。

――なるほど。だから、すっと入ってくるんですね。

オカヤ:人は「ふと空を見上げたり」はしない(笑)

――たしかに(笑)。便利で、つい手癖で使ってしまう言い回しってたくさんありますから。

オカヤ:そういう言い回しに頼らなくても、みんなに伝わるようにできるんじゃないかと思っていて。なるべく正味のところを伝えたい、と思っています。

――使い勝手のいい言葉では言い尽くせないことが描かれているのがマンガですもんね。

オカヤ:自分が読む側のときも、それが快感じゃないですか。「ああ、こういう風に言ってもらえた!」みたいな。私の作品もそう思ってもらえたら嬉しいです。

◇プロフィール 
オカヤイヅミ。1978年生まれ。東京都生まれ。独自の感性で日常を切り取った『いろちがい』で2011年にデビュー。著書に『すきまめし』『続・すきまめし』『ごはんの時間割1・2』『ものするひと1・2・3』『みつば通り商店街にて』ほか、人気作家へ理想の「最後の晩餐」について訊ねたエッセイコミック『おあとがよろしいようで』など。デビュー10周年を記念して、『白木蓮はきれいに散らない』と『いいとしを』を同時発売し話題になっている。

文/山脇麻生
撮影/横田紋子

関連記事

トピックス

晩餐会での“少女漫画のようなエスコート”動画が話題に(提供:soya0801_mlb)
《独占入手》妻・真美子さんの手を優しく取って…大谷翔平、晩餐会での“少女漫画のようなエスコート”動画が話題に ファンに伝えた「ありがとう」
NEWSポストセブン
若い女性たちとエプスタイン(民主党資料より)
「ひとりで楽しみ、体に触り、無理やり行為に及んだ」10代の少女らが性的搾取された“エプスタイン事件” 米司法省が新たに公開、画像や動画…300万枚の資料が示す“被害の詳細”
NEWSポストセブン
高市人気で議席増を狙う自民だが…(時事通信フォト)
《自民維新で300議席》衆院選の情勢調査報道は投票に影響を与えるのか 自民が高市支持でこのまま大勝?心理士が分析
NEWSポストセブン
CanCam卒の注目女優宮本茉由
《CanCamモデルを卒業》不倫ドラマ主演でも話題・宮本茉由、長野県・北アルプスの麓で見せた「止まらない色気」
週刊ポスト
レーシングドライバー角田裕毅選手
【大谷翔平より高い知名度】レーサー角田裕毅(25)が筋骨隆々の肉体美を披露「神が認めた男」のパーソナルブックに堂本光一らのコラムも  
NEWSポストセブン
ラオジーのブログより(現在は削除済み)
《昨夜の子は何歳だったんだ…との投稿も》「ラオスの帝王ラオジー」ブログの不正開設の疑いで61歳の男が逮捕 専門家が明かしたラオス児童買春のいま
NEWSポストセブン
東京21区〜30区は中道が優勢な選挙区も(時事通信フォト)
【2・8総選挙「東京21〜30区」は波乱の展開】前回無所属で議席を守った旧安倍派大幹部は「東京最多の公明党票」に苦戦か 中道がややリードの選挙区も
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン