芸能

『大豆田とわ子と三人の元夫』 角田晃広と伊藤沙莉、仕込まれた「二つの毒」への期待

番組公式HPより

番組公式HPより

 いわゆる玄人筋の評価が高い作品である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 松たか子主演、坂元裕二脚本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系火曜午後9時)が話題を振りまいています。「心をわしづかみにされた」「すみずみまで神経の行き届いている」「会話とかけ合いが絶妙」「ウディ・アレンの映画のような印象」「大人の会話劇がおしゃれ」と絶賛する人も多い。

 その一方、独特な色彩を放ちひとクセある坂元ワールドだけに、馴染めないという声も。「いちいちひねった言い回しが過剰」「何が言いたいのかわからない」「センスの押し売り」「ナレーションが目立ちすぎ」「東京03風コントになっている」……。

 そもそも万人ウケを狙っていないのが坂元脚本の世界。議論百出すること自体、作品のパワーを測るバロメーターかもしれません。数字も微妙で第1話の視聴率は7.6%、2話6.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)と1ポイント近く減りました。冒頭期待してチャンネルをあわせ早々と脱落した人がいる一方、一定のコアファンを獲得しもうこれ以上数字は落ちないのかもしれません。

 物語の主人公は……三回離婚している住宅建築会社社長・大豆田とわ子(松たか子)。元夫にレストランオーナーでモテ男の田中八作(松田龍平)、ファッションカメラマンで器の小さい佐藤鹿太郎(角田晃広)、大豆田の会社の顧問弁護士で理屈っぽい中村慎森(岡田将生)。それぞれ仕事もキャラクターも違う3人がいます。

 とわ子対元夫3人の会話の中で、テーマはたえず変転していく。ドラマにありがちな事件や犯罪、突然の出来事などの「大テーマ」を追う筋書きではない。フツーの日常の中にたしかに存在する、ささやかな、しかし本人にとっては時に深い意味を持つ「細部」をめぐる会話劇です。

 とわ子は「網戸が外れるたびにああ誰か直してくれないかなとは思う。でもそれはあなたたちじゃありません」と語る。このセリフが象徴するように「網戸が外れる」ことはとわ子にとって大きな問題で、それを直してくれる誰かこそ共に生きていくパートナー。

 一方、キッチンの棚からこぼれるパスタや工事現場の穴は、とわ子にとってさして問題ではないらしい。おしゃれなパン屋にジャージで入っても平気。お祝いの席で口内炎が気になったりする。個々人それぞれ、かように日常は凸凹していて気になるポイントも他人と微妙にズレて、時にそれがハレーションを生み共同生活を維持する障碍にもなる。

 何でもない生活を、他人と続けることがいかに難しいか。思わぬ「細部」に足をとられて転んだりする日常生活の正体を軽妙に浮き彫りにしていく坂元ワールドの醍醐味。過去作『カルテット』(2017)における「唐揚げにレモンを絞るかどうか問題」にも通じています。

 今回のドラマで気になるのは松たか子、松田龍平ら安定した常連役者陣の中に、良い意味で違和を発する「二つの毒」が仕込まれていること。

関連記事

トピックス

太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑(時事通信フォト)
【激震スクープ】太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑 大阪府下の元市議会議長が証言「“500万円を渡す”と言われ、後に20万円受け取った」
週刊ポスト
2024年5月韓国人ブローカー2人による組織的な売春斡旋の実態が明らかに
韓国ブローカーが日本女性を売買春サイト『列島の少女たち』で大規模斡旋「“清純”“従順”で人気が高い」「半年で80人以上、有名セクシー女優も」《韓国紙が哀れみ》
NEWSポストセブン
村上信五とマツコ・デラックス
《不適切編集謝罪も街頭インタビュー継続》『月曜から夜ふかし』は存続できるのか? 問われる根本的な問題「一般人を笑い者にする演出」「笑いの手数を追求するスタッフのプレッシャー」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
フィリピン人女性監督が描いた「日本人の孤独死」、主演はリリー・フランキー(©︎「Diamonds in the Sand」Film Partners)
なぜ「孤独死」は日本で起こるのか? フィリピン人女性監督が問いかける日本人的な「仕事中心の価値観」
NEWSポストセブン
timelesz加入後、爆発的な人気を誇る寺西拓人
「ミュージカルの王子様なのです」timelesz・寺西拓人の魅力とこれまでの歩み 山田美保子さんが“追い続けた12年”を振り返る
女性セブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン