国内

広島再選挙で表面化 中高年も保守層も政党と選挙にうんざり

2019年参院選に当選した河井案里被告。このときの公選法違反事件で有罪判決を受けて辞職、再選挙となった(時事通信フォト)

2019年参院選に当選した河井案里被告。このときの公選法違反事件で有罪判決を受けて辞職、再選挙となった(時事通信フォト)

 若者はいろいろなものから「離れ」ているとたびたび言われてきたが、そのひとつに「政治」があった。選挙への関心や投票率、日頃の政治に関する話題に興味が薄いからというのだが、今では無関心から失望へと姿を変えて全世代に広がってしまっているようだ。ライターの森鷹久氏が、4月25日に投開票を終えた参議院広島県選出議員再選挙で、かつては熱心に選挙応援に加わっていた中高年の失望についてレポートする。

 * * *
 諸外国と比較しても、政治に対する関心が低すぎると指摘される我が国の国民性。かつては「一億総中流」などと言われ、政治に関心を持たなくても一定水準の生活が出来たことに無関心の原因がある、という見方もあるが、本当にそうだろうか。国民が、あまりにもお粗末な「政治の実態」を目撃し、嫌気がさしている、というのが実情ではないか、そう思わせるような騒動が、広島県内で起きていた。

「私は今も自民党支持者ですよ、それは間違いない。ただ、自民党が素晴らしいから、というわけではありません。消極的な支持、です」

 広島県内の機械製造工場経営・松本寿彦さん(仮名・50代)は、父親の代から自民党を応援してきた支持者。党員ではないものの、選挙のたびに自民関係者に協力し、票を投じてきた。

「戦後復興も自民党じゃないとなし得なかったし、一時期、与党が交代したりもしたが、あまりにもひどかったのは皆さんもご存知のはず。結局のところ、自民党を応援することが国益にも、自分の利益にもつながる。日本国内、どこでもそうでしょう?」(松本さん)

 だが最近は、松本さんの信念を揺るがすようなことばかり起きている。

 河井克之元法相、妻の案里元参議が、公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕、起訴されたことは既知の通り。案里元参議の辞職に伴い今月25日に行われたのが、参院・広島選挙区の再選挙である。元々保守派が強い地盤であったというが、公示後の報道でも、自民候補者と野党が推す女性候補者の支持率は拮抗。そんな中、松本氏の元には早速、自民党関係者からの「お伺い」の連絡が次々に入っていた。

「河井さんが悪いとは誰でも思っている。でも、お金を受け取った自民系の県議などは、誰も罪に問われていません。そんな県議たちが選挙応援までしている。反省はしているとしても、河井さんたち以外、誰一人責任を取っていないんですよ。そんな状態で自民を応援するということは、今の自民党を、広島の自民党を肯定することと変わらない」(松本さん)

あなたが信頼回復と言って誰が信用するの?

 同じような葛藤を筆者に漏らしてくれた人は他にもいる。同じく広島県内で複数の飲食店を経営する町田寿美子さん(仮名・60代)も、元は熱狂的な自民党支持者だったが、今回ばかりは「いい加減にして欲しい」とため息をついた。

「地元の商工会から青年会議所まで、みんな自民支持なんです。とはいえ2009年に政権交代した時、戸惑いながらも『もう少しマシになるのかな』なんて思ってたから、野党(当時の与党)のあまりのいい加減っぷりに裏切られた感じがしましたよ。この人、この政党に任せたいというより、やっぱり自民しかない、と思ったんです」(町田さん)

 しかし今回、金をバラまいた河井夫妻のみが逮捕され、金を受け取った自民系議員、そもそも買収資金の出所とされる自民党本部の関係者は、誰一人として逮捕も処分もされていない。原因究明すら有耶無耶になっていることに大きな違和感を持ったという。

「再選挙に向けて、いろんな人がかけずり回っていますでしょ?うちにも自民支持者の商店街の役員が来ましたが、今回ばかりは強くお願いできないとため息をついていました。河井さんからお金をもらっていたある議員が挨拶していて、私たちも表向きは頑張ってほしい、と声をかけますが、内心では、河井さん一人悪者にして卑怯だな、と。知人とはまた金でも配らないと当選は難しいよね、と笑うくらい。かといって、野党を支持するのも難しい。あの人たちも、結局責任を取らないことは政権交代時にいやと言うほど思い知りましたので。もう選ぶ先がないんですよ」(町田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン