コロナ危機のさなかに就任した菅義偉・首相は官房長官時代に見せた「危機管理のプロ」の手腕と、非世襲議員だからこその庶民目線の政治を期待されたが、対応が後手後手でワクチン接種も主要国で最も遅れ、危機の出口を見いだせない。首相の手腕に失望した国民は、「次の総理」に望みをつないでいる。自民党内も大型連休明けから「ポスト菅」をにらんだ動きが本格化する情勢だ。
9月の自民党総裁選には、自薦他薦10人の候補の名前があがっている(表参照)。その中に国民の期待に応えられる政治家はいるのだろうか。本誌・週刊ポストは、半世紀にわたりこの国の政治を取材し、歴代首相の成功と失敗を目の当たりにしてきた大ベテランの評論家とジャーナリスト5人(野上忠興氏、屋山太郎氏、小沢遼子氏、泉宏氏、小林吉弥氏)に、総理候補たちを採点(1人10点満点)してもらった。
最有力候補に浮上しているのが河野太郎・行革相(3位)、その対抗馬と見られているのが野田聖子・幹事長代行(4位)だが、専門家の評価はどちらも割れた。
河野氏に水をあけられているのが、安倍長期政権下で政治キャリアを重ねて「総理候補」と呼ばれるようになった茂木敏充・外相(5位)、加藤勝信・官房長官(6位)、西村康稔・経済再生相(8位)、下村博文・政調会長(9位)らかつての“安倍側近ブラザーズ”たちだ。
総理大臣として多くの官僚、政治家を統率するには人心を掌握するための“人望”が重要な要素という点で識者たちの意見は一致している。
彼らに共通するのは“人望”面の弱さだ。
大臣4回(通算6期)の茂木氏は、政策能力を評価する声が多い。しかし、「個人プレーが多く、人心掌握ができていない」(小林氏=3点)。
安倍晋三・前首相の抜擢で出世し、一時は総理候補の最右翼とみられていた加藤氏はコロナ対応で評価を下げた。加藤氏の大蔵官僚時代からウォッチしてきた野上氏が語る。
「調整能力がなさすぎる。大蔵官僚出身でいまも官僚体質が抜けず、政治家に必要な人心掌握ができていないからでしょう。現在のコロナ対応の失敗の原因の一つは菅首相が彼を官房長官に選んだ人事の失敗にあるとも言える」(野上氏=1点)