ANAあきんど販売企画部副部長の中嶋章人氏
旅行プランの比較サイトを使って複数の旅行会社の商品を比べて購入する消費者も増えていることから、旅行会社の販売はインターネットに急速にシフトしている。さらにANAでは昨年4月から、需要に応じて航空券の値段が違ってくる価格変動型運賃を導入している。極端に言えば、毎日でも航空運賃が変わる。
これを利用して旅行プランを設定し、日々変わる情報を素早く正確に顧客に伝えようとすると、とても紙のパンフレットでは間に合わない。旅行会社としては、ますますインターネットを告知・販売の主力にせざるをえない状況でもある。ますます集約化はすすむことになる。
情報の変化が早くなれば、当然ながらセールス対応にも迅速さが求められる。そうなると対面ではなく、電話やリモート会議が中心となる。ANAあきんどのセールス機能を各支店に分散しておく意味合いは薄れ、集約化は必然の流れともいえるのだ。
とはいえ、旅行会社の支店が窓口での販売や独自のプラン設定をやめているわけではない。リモート会議で対応できるとしても、対面によるサポートも必要な場面がないとはいえないはずである。そのときの対応について、中嶋氏が説明する。
「所属は東京の本社ですが、地方の居住場所で働くリモート社員を置いています。通常はリモート勤務ですが、対面の必要があれば、近くのリモート社員が駆けつけることになっています。集約化してもサポート体制は整っているわけです」
ANAあきんどの航空券セールスの集約化はスタートしたばかりで、効果の評価は先のことになりそうだ。それも、新型コロナが収束して航空券需要が回復しないことには判断が難しいだろう。
取材・文/前屋毅(ジャーナリスト)