そしてもうひとりの「平」は、栄一の従弟の尾高平九郎(岡田健史)だ。
『青天を衝け』の大きな特長は、栄一の地元の家族・親族の絆、商売やものの見方をていねいに描いたこと。その中で平九郎は、まだ目立たないが、やがて栄一の「見立て養子」になる男子だ。兄貴分の栄一と喜作が去り、兄の長七郎(満島真之介)が捕縛され、大変な村でまじめに働く平九郎。しかし、栄一の師匠ともいえる兄の尾高惇忠らに従い、幕末の動乱に巻き込まれてしまうのである。
平九郎のストーリーもこれまであまり描かれてこなかったが、実在の平九郎も文武両道で写真に残る姿もなかなかの美青年。今後、めきめきと存在感を増すはず。岡田健史は、昨年、BSプレミアム『大江戸もののけ物語』で猫又などもののけに助けられるへなちょこ若侍、映画『新解釈・三國志』では調子のいい諸葛孔明(ムロツヨシ)らに押されまくる呉の王・孫権、現在は『桜の塔』で警視総監を目指すギラギラ監察官上條(玉木宏)らに囲まれる若き刑事を演じている。年長者(猫又も含め)に翻弄される若者役がとてもうまい。美男子・岡田平九郎も見る人をくすぐる愛されキャラである。
ふたりの「平」に笑わされるか、泣かされるか。名場面に注目したい。