芸能

話題の韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』、目が離せない「斬新な主人公」

ああ

製作費20億円を投入した話題の韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』(写真/Netflix公式HPより)

 2月からNetflixで世界同時配信されている韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』が話題を呼んでいる。日本ではNetflixの「今日の総合TOP10」で1位を獲得し、世界でも6位と上位をキープ。“次の『愛の不時着』”として大きな注目を集めている本作の見どころや韓国での反応を、ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

 * * *
 今日本で話題沸騰中のドラマ『ヴィンチェンツォ』。本作は、コロナ禍の韓流ブームの火付け役となった『愛の不時着』を手掛けたスタジオドラゴンと韓国のケーブルテレビ局tvNが、200億ウォン(約20億円)もの製作費を投入した大作だ。主演は、2019年に放送された『アスダル年代記』以来、久々のドラマ出演となった韓国の人気俳優ソン・ジュンギが務めているだけに、韓国では放送開始前から大きな期待が寄せられていた。予想通り、韓国では回を重ねるごとに視聴率は右肩上がりに上昇し、第1話の7.7%から最終回の第20話には16.6%を記録。最高視聴率は18.4%で有終の美を飾り、地上波放送を含む全チャンネル同時間帯視聴率1位を獲得した。

 韓国では、特に主演のソン・ジュンギに注目が集まった。SNSでは、「終わりの見えないコロナ禍で、唯一笑顔にさせてくれる存在」、「『愛の不時着』以来、久々に主人公に惚れた作品」「甘いマスクとクールな役柄からは想像もつかない表情のギャップが最高」といった声で溢れた。キスシーンの回の放送終了後、公式YouTubeにクリップ動画が公開されると、あっという間に35万回再生を突破した。

 本作は、冷徹非情なイタリアマフィアの顧問弁護士で、韓国系イタリア人のヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)が、5年ぶりに韓国に戻るところから始まる。ソウルの雑居ビルに眠る15トンもの金塊を手に入れるため、ビルの住人たちを立ち退かせようとするなかで、悪事を働く大企業との法廷闘争に巻き込まれていく。法では裁けない、富と権力を持つ組織を相手に、悪を悪で裁く“マフィア流”で問題に立ち向かうストーリーである。

 あらすじからは、一見よくあるダークヒーロードラマという印象を持つだろうが、そのイメージは良い意味で早々に裏切られる。第1話では、イタリアの壮大な葡萄畑を舞台に、マフィアを相手に華麗に報復を遂げる知的で冷徹なヴィンチェンツォの姿が描かれるが、そのすぐ後にはタクシー強盗にすべてを奪われ、ハトの鳴き声に眠れぬ夜を過ごす姿に笑いが止まらなくなる。背筋が凍るような冷淡さを感じさせたかと思えば、人間味溢れるヴィンチェンツォに思わず吹き出し、華麗に敵を倒すアクションシーンでは惚れ惚れさせられるのだ。見始めれば、主人公の斬新な魅力に目が離せなくなり、コメディとシリアス、バイオレンスの絶妙なバランスにすぐに夢中になるだろう。

 他の俳優陣も素晴らしい。ヒロインを演じるチョン・ヨビンは、大手法律事務所での昇進を目指す敏腕弁護士からヴィンチェンツォの相棒となり活躍するがが、同時に天然キャラも上手く演じている。大ヒットした『梨泰院クラス』で悪役を演じたユ・ジェミョンは、本作ではヒロインの父で庶民の味方の弁護士を好演しており、「カメレオン俳優」として注目を集めている。また、同じく『梨泰院クラス』でヒロインの母を演じたキム・ヨジンは、ホン・チャヨンと対立する血も涙もない弁護士を演じ、『愛の不時着』で憎めない北朝鮮軍人を演じたヤン・ギョンウォンは、金塊が隠されたビルの住民としてコミカルな演技を見せている。『愛の不時着』や『梨泰院クラス』を見ている人なら、知っている俳優が多く出演しているためさらに楽しめることだろう。

 tvNは本作について、「スケールが違う快感バスター(快感+ブロックバスター)」と紹介している。ソン・ジュンギも制作発表会で、「『ヴィンチェンツォ』は社会を批判しながらもそれを愉快に紐解いていく。そこが炭酸水のようにすっきりしていて新しかった」と紹介した。その言葉通り、悪に立ち向かいやっつけていく姿は、見ていてまさにスカッとする。主人公と対立する悪役や、味方のキャラクターの存在も生き生きとしていて、笑いありスリルありアクションあり胸キュンありと、さまざまな感情が入り交じり視聴者の心を掴んで離さない。“次の『愛の不時着』”としてさらに注目を集めていくのは間違いないだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン