サブコンパクBEVにしては高すぎる「価格」
Honda eにとってのもう一つの急所は価格である。今回ドライブしたのはハイパワー版の「アドバンス」で、税込み価格は実に495万円。ローパワー版でも同451万円。最大のターゲットである欧州でも同水準。いくらセンスで攻めるとしても、サブコンパクトクラスのBEVとしては高価にすぎる。
高価になったのには一応理由もある。Honda eの開発真っ最中の頃はBEVが今ほど盛り上がりを見せるとは予想しておらず、欧州でのCO2排出量規制をクリアするだけの台数を出せればいいとホンダは考えていた。ゆえにHonda eは量産には不向きな構造を持っている。
たとえばリアのパラレルリンクストラットサスペンションのアームは一般的なプレス鋼板ではなく、丸型の鉄棒を切断、溶接するという手間のかかる方法で作られている。コストはかさむが生産設備への投資は抑えられるということでそうしたのだという。
フロントサスペンションのアームも軽量化のためにこのクラスとしては異例の鋳造アルミニウムを使っている。これも部品としては高価だが、生産台数が少ないならボディ側で数kg軽量化するよりお金をかけないで済むという判断で採用されたものだ。
販売目標は欧州で年間1万9000台、日本で年間1000台。BEV購入に際して補助金がたんまり出る欧州では推せるだろうし、日本では月100台にも満たないのだから富裕層に売れれば御の字とでも考えたのだろうか。
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が異様に持てはやされ、BEVへの礼賛の嵐が吹き荒れている今の世情を見て、ホンダは性能、価格の両面でしまったと思っているに違いない。
電子ミラーなどの先進装備を省いてもいいから補助金未適用の状態で標準タイプが320万円、アドバンスが360万円くらいであったら、そしてバッテリー容量は小さくとも急速充電で30分25kWhくらい充電可能ならば、この素晴らしいライドフィールの虜になるユーザーが続出したことだろう。