ダイナミックな走りと静かな室内空間はテスラ車並み
では、さっそくドライブの実感をお伝えしていこう。Honda eの総合的な印象を一言で表現すると、「走りの素晴らしさへの感動を高頻度の充電が邪魔するクルマ」だ。
走り味については申し分ない。もともとBEVは重いバッテリーを床下に積むため低重心化に有利でライドフィールについては有利とされているが、Honda eはBEVゆえの有利性とは関係なく素晴らしかった。
何が素晴らしかったかと言うと、クルマをクルーズさせているときの滑走感である。Honda eを走らせていると、まるで床下で真円のタイヤが地球ゴマのごとく超精密に安定して高速回転しているように感じられる。結果、ボコボコの山道から凸凹が小さい滑らかな道まで、サスペンションがひっかかりを感じさせず滑らかに路面の不整を吸収するという感じであった。
もちろん実際にはタイヤは変形するし、道には凹凸があるのでホイールは常に揺れ動いている。ホイールのセンターがブレているクルマなどもない。が、全部のクルマがこういうフィールをモノにしているわけではない。というより、こういうフィールのクルマがたまに出現すると言ったほうがいいかもしれない。引っかかり感の小さなクルマは乗っていてとても気持ちがいい。
この特性が生きるのは高速道路やバイパスを巡航するときだけではない。九州北部のワインディングロードを速いペースで走った時も、同様に気持ちが良かった。
Honda eはボディが大変強固に作られており、バンピー(跳ねやすい)な不整路面でもサスペンションが正確に作動する。コーナリング姿勢は後輪駆動であることを感じさせるもので、コーナー出口に向かう時にスロットルを踏むと外側の後輪を沈ませながら弾けるように加速する。
タイヤはグリップ力が高いスポーツタイヤのミシュラン「パイロットスポーツ4」で、サイズは前205/45R17、後225/45R17。これは大変良いタイヤなのだが、サスペンションチューニングが雑だとゴツつく。Honda eはそれをこの上なく見事に履きこなしていた。
攻めの走りをしていても乗り心地はフラット、おまけにロードノイズやパワートレインの騒音もきわめて小さい。山岳区間ではBluetoothオーディオでメロウな楽曲を流しながら走ったが、さしてボリュームを上げなくても十分に聞こえる。峠走行ですらもクルーズしているという言葉を使いたくなるくらいだった。
ダイナミックな走りと静的な室内の空気というアンビバレントさは、昨年秋に東京~長崎間を走ってみたテスラ「モデル3」に似たもの。コンパクトクラスではエンジン車、BEVを問わず、こんなクルマは初めてで、あまりにも心地よい移動をずっとずっと、どこまでも味わいたいという気分にさせられた。