「いちばん星マーケティング」に込めた想い
──消費者の嗜好も多様化していますからね。
野瀬:はい。他社の主力ブランドのように、マジョリティを抑えていこうということではない時代がたぶん、もう来ているんです。
世界を俯瞰しても、ナンバーワンビールが価値になっていた時代から、どれだけパーソナルな要素に寄せていけるかという時代になってきていますから。それこそが、われわれが掲げる「いちばん星マーケティング(※注1)」に合致しており、サッポロが目指す方向性ではないだろうかと。
※注1/サッポロビールの個性豊かなブランドの熱狂的なファンづくりを目指すマーケティング戦略。お酒と人との未来を創る“一歩先の価値提案”で、「新しいお酒のある豊かな社会と生活」に貢献する。
サッポロビールには150年近い歴史がありますが、以前、司馬遼太郎の『アメリカ素描』という本を読んでいたら、アメリカ合衆国には歴史がないというけれど、近代国家を築いた観点からすると、200年という建国後の歴史はフランスより長いと。確かに、フランス革命はアメリカの建国より10年遅れていますが、ヨーロッパの歴史全体で見るとアメリカよりはるかに長いんです。
サッポロという会社は他社よりもヨーロッパ的で、いい意味で会社やイメージが長く変わることなく今日まで来ています。そこは今後も大事にしなければいけないでしょうね。
──サッポロには「ヱビス」「黒ラベル」に加え、飲食店向けが主力の「サッポロラガー」、北海道エリア限定の「サッポロクラシック」、伝説のホップを使用した「SORACHI 1984」など、ビールのラインナップは他社より多彩です。
野瀬:ビアレストランのサッポロライオンなどで提供している「エーデルピルス」や「白穂乃香」といった個性的なビールもあります。もちろん、飲食店向けで飲まれているビールを缶に詰め、家庭用としても販売するやり方もあるでしょうが、飲食店向け商品はそれはそれで大事にしておきたいと考えています。