退院後、自宅で娘に読み聞かせをした際の写真(5月)
できることがまだ絶対あるはず
「絶対に退院したいから頑張る」―強い思いを持ち直した和さんは、4月20日に無事退院。しかし、1週間後の外来受診でショッキングな話を聞いた。
〈2021年4月27日
診察。もう永く生きられないって話された。最後の抗がん剤も効いてないらしい。治験も受けられるものないから、緩和ケアに移ったほうがいいって。東京の病院も同じ意見らしい。東京の病院には緩和病棟ないから違う病院紹介するって言われた。
亡くなった癌友沢山見てきたから、どんな道通って死ぬのかわかる。私もその通り進んでってる。怖い。本当にもうダメなのかな?
術後の説明聞いた時からちょっとそんな気はしてたんだけど、大丈夫って言い聞かせてた。まだ死にたくない。怖い。やりたいことも沢山あるし娘と遠藤さん(夫)と、もっとずっと一緒にいたい。なにより遠藤さんを悲しませたくない。なんでこうなっちゃったんだろう。
でもまだ諦めないよ。できることはまだ絶対あるはず。自由診療でもなんでもいい。どんなにきつい治療でも頑張るから絶対治してやる。負けない。大丈夫まだ頑張れる。〉
2日後、娘とともに夫の待つ東京の家に帰ってきた和さん。しかし、その後、腫瘍が尿の通り道を塞いでいることが発覚し、腎ろうを造設する手術を受けることになった。
再び入院生活が続くなか、和さんは、主治医以外の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用して、新たな治療法を探し続けた。
「このご時世、オンラインで利用できるので助かりました。主治医からは、『もう治療法はない』『新たな治療を受けても意味がない』と言われたんですけど、どうしても諦めたくなくて。
セカンドオピニオン先では、『いくつかできる治療があるかもしれない』と言われました。そのうちの1つがダメだとわかったのが6月10日で、いまは別の治療法を試そうか迷っているところです。人工肛門と腎ろうの造設で入院続きだったので、全然がんの治療ができていなくて……『早く治療を進めたい』という焦りもあります」