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「報連相」にかける時間が莫大に チャットに怯えるビジネスマンたち

チャットアプリ導入で、かえって負担が増えた(イメージ)

チャットアプリ導入で、かえって負担が増えた(イメージ)

 かつて、初めて電子メールが導入されたとき、メールを送ったあとの相手方に「メールを送りました」という電話をかけて確認をさせる職場があった。いま、その習慣を残しているところはないだろうが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大によって急速に導入がすすんだビジネスチャットアプリをめぐって、似たような現象が起きている。一対一のメッセージ、グループチャットや音声通話の機能がまとまっているチームコミュニケーションツールは本来、業務の効率化をすすめ、働きやすくなるはずだった。Slack、Chatwork、Microsoft Teams、Googleトーク、日常的にも利用者が多いLINEのビジネス利用などの導入によって、働く人たちにどんな負担が増したのか、ライターの宮添優氏がレポートする。

 * * *
 コロナ禍により「テレワーク」に移行したというサラリーマンたちが今、必要に迫られて使用しているのが「ビジネスチャットアプリ」ではないだろうか。マイクロソフトの「チームズ」や「チャットワーク」、そして「スラック」が代表的なものとしてよく知られている。本来であれば対面や電話でやりとりしていたことも、ほとんど「チャット」を使って行うようになった、という人も少なくないだろう。

「最初は全部チャットでできて便利だ、未来の働き方だと思いました」

 都内在住のPR会社勤務・横田光徳さん(仮名・30代)の職場でも、2020年に一度目の緊急事態宣言が出て以降、1ヶ月のうち4分の3がテレワークに。当初はメールと電話、無料メッセンジャーのLINEを使って業務を進めていたが、しばらくすると、全社員が利用できる有料のツールが提供されるようになった。すると、当初の働きやすさが消えていったのだ。

「管理がしやすい、と上司が大喜びしていたのを見て、嫌な予感はありました。その予感通り、テレワーク中に少しだけ席を離れる時、例えばキッチンに飲み物を取りに行ったりトイレに行くのも全て『要報告』。チャットで上司からメッセージが送られてきて、2分以内に返信がなかったら電話です。なぜ返信しないって。出社している時より監視体制が強力になりました」(横田さん)

 テレワークのチャットに悩まされている人は、横田さんだけの特殊例ではない。関西の中堅広告代理店勤務・中野優里さん(仮名・20代)は、LINEなどでもお馴染みの、送ったメッセージを相手が読んだかが記録される「既読機能」について、怒りを爆発させる。

「休みの日でもいつでも、チャットのメッセージに既読がついてなければすぐに電話してくる上司。送ったのになぜ読まない、と怒るんです。チャットアプリも業務用と私用のスマホ両方にインストールするよう言われていて、四六時中上司と繋がっていなければいけません。社員のストレスはマックスで、これなら以前の方が良かった、と口を揃えて言っています」(中野さん)

 上司からのメッセージが届いても、さまざまな確認事項などがあってすぐに返信できない場合だってある。そういう際には「メッセージを見ました、少々お待ちください」と返信するよう指導されており、業務中の「報連相(ほうれんそう)」にかける時間だけが莫大になり、実務が疎かになっているとも話す。

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