読みたいものを読みたいように読み、自由に楽しむ。エンタテイメントの神髄を、日高氏は信じているのだ。
「仮に本書で訴えたいことがあるとしたら、それです。細部を気にした方が楽しいから私は気にするだけで、大抵のことは放っておいても何とかなり、でも世界は着実に破滅に近づいている。その間、与太話に興じるのも一興ですし、終わりがあるからこそ精一杯遊ぶのが楽しいと思うんですよ。永遠に生きたりするよりも。
映画『シン・ゴジラ』に『私は好きにした、君らも好きにしろ』という有名な台詞があるけど、あれです。私は好きに書いた、あとは好きに読んでくれっていう。特に後半はコロナが猖獗を極めた時期や父を亡くした時期に書き、より現実との地続き感が増した気もしますが、あくまで基本は与太話なんで」
執筆に際しては紙芝居や駄菓子屋の佇まいにも似た既視感を大事にしたと言い、遊びをせんとや生まれけんを地で行くような、自由で豊かな物語世界を、ぜひ!
【プロフィール】
日高トモキチ(ひだか・ともきち)/1965年宮崎市に生まれ、大阪、神戸、東京で育つ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中にゲームブック『機動戦士ガンダム シャアの帰還』でライターデビューし、1992年「PARADISE LOST」(『近代麻雀オリジナル』連載)で漫画家、またSF同人誌『パラドックス』掲載の「アンビストマの大迷宮」で小説家としてデビュー。『トーキョー博物誌』『里山奇談』等著書共著多数。京都精華大学講師を経て現在は新潟・開志専門職大学専任講師。167cm、84kg、A型。
構成/橋本紀子 撮影/喜多村みか
※週刊ポスト2021年7月2日号