ただでさえ、宣言解除による感染拡大も懸念されている。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の古瀬祐気特定准教授の試算によると、感染力が強いインド発のデルタ株への置きかえが進んだ「最も悲観的なシナリオ」の場合、7月前半から中旬には都内の新規感染者が1日1000人を超えるという推計になる。前出・上氏はさらに厳しい状況もあり得るとする。
「昨年の“第2波”でもわかるように、夏場は大流行の恐れがある。海外で流行しているインド株(デルタ株)は、インドやバングラデシュなどアジアで初めて大流行を起こした株で、アジア人が持っているとされる“ファクターX”が効かないと考えられる。他のアジア諸国での感染率を踏まえると、都内で1日2500~3000人の新規感染を覚悟しておくべき。医療キャパシティは完全に超えてくるでしょう」
こうした事態に政府が備えているとは考えられない。危機管理広報コンサルタントの山口明雄氏は、政府の姿勢を厳しく批判する。
「とにかく政府は“開催ありき”のゴリ押しばかり。本来であれば国民が納得できるように、危機管理対策について説明するべきですが、そこが全くできていない。危機管理そのものができているのかどうかも、国民はわからない状態なのです」
そうした対応が続き、「危機感がないまま五輪が開催されれば、五輪ムードで国全体が緩み、さらに感染が拡大するリスクがある」(岩田教授)と懸念されているのだ。
政府は五輪開催を「コロナに勝った証」にするとブチ上げてきたが、このままでは「コロナを侮った証」になりかねない。
※週刊ポスト2021年7月9日号