芸能

『リコカツ』や『まめ夫』が証明した音楽の力 夏ドラマでもポイントに

主題歌はmiletが担当(番組公式HPより)

主題歌はmiletが担当(番組公式HPより)

 メディアもコンテンツも多様化して、民放ドラマも総合力が問われる時代。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 続々と最終回を迎えた春ドラマ。振り返ってみて印象的だった要素の一つに「音楽の力」があります。ドラマに主題歌がつくのはお定まりのことですが、既存のスタイルを超えて、まるで物語の一部だったり、その後の展開にまで食い込んでくるような歌の力が際立っていた。それが『リコカツ』(TBS系)の主題歌、米津玄師『Pale Blue』です。

『リコカツ』はファッション雑誌編集者・水口咲(北川景子)と自衛官・緒原紘一(永山瑛太)、結婚したばかりの二人の「離婚から始まる恋」がテーマ。このテーマのために米津玄師が書き下した曲は、サビが響き始めるとまるで物語の続き。心にぐっと響いてくる。視聴者の気持ちを掴み連れ去ってしまうように。咲と紘一はこれからも、ずっと愛し合う関係でいられるのか。それともこれで本当に終わりなのか。

 絶望と希望との間をたゆたう意味深な歌詞。繊細なボーカル。ドラマに「色を添える」どころか、もはや語り部の一人のようでもあり、愛するがゆえの苦しみを伝える重要な要素になっていたのでした。

 さらに言えば、音にはセリフや筋立てとはまた別に、直接的に心を揺さぶる力がある。物語の強力な参加者として、主題歌をドラマに溶け込ませた『リコカツ』の演出は長けていました。

 もう一つ、音楽が際立ち鮮烈な印象を残したドラマがありました。

『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ・フジテレビ系)は、個性的な作風と脚本、キャストたちの演技などすでに高い評価を受けていますが、改めて声を大にして絶賛したいのがエンディングの「音の力」です。

 主題歌はSTUTS&松たか子 with 3exesの『Presence』。メイン・ボーカルは松たか子。メロディーと歌詞はシンガー・ソングライターのbutajiとSTUTSが担当。3exes(=3人の元夫)として岡田将生、角田晃弘、松田龍平がコーラス参加--という「基本型」がありつつも、毎回ラッパーが替わり背後の風景も変化していく。歌詞も話に沿って変わる。実に凝っていてカッコよくておサレ。遊び心が見え隠れし、丁寧に作り込んでいく精神も光っていました。きっと毎回エンディングに浸ってしまった視聴者が多かったのではないでしょうか。

 そもそも松たか子×ラップという取り合わせ自体が斬新で瑞々しい。このドラマにおける音楽は、ドラマ世界の個性や広がりやアート性と響き合って、ドラマをより輝かせる役割を果たしたのではないでしょうか。

関連記事

トピックス

慶應義塾アメフト部(インスタグラムより)
《またも未成年飲酒発覚》慶大アメフト部、声明発表前に行われた“緊急ミーティング”の概要「個人の問題」「発表するつもりはない」方針から一転
NEWSポストセブン
物件所有者が貸し出しを止めるケースもある
《事故物件のリアル》「変色した血痕、体毛の塊…犬たちが死に物狂いで争った痕跡」ブリーダーの部屋で起きた“凄惨すぎる事件”
NEWSポストセブン
引退後の生活を語っていた中居正広
【全文公開】中居正広、15年支えた恋人との“引退後の生活” 地元藤沢では「中居が湘南エリアのマンションの一室を購入した」との話も浮上
女性セブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン
2名の未成年飲酒が確認された慶應義塾アメフト部(時事通信/インスタグラムより)
《2年足らずで再度発覚》慶應アメフト部員、未成年飲酒で複数名が処分 同部が声明「厳正に対処いたします」
NEWSポストセブン
親方としてのキャリアをスタートさせた照ノ富士(写真・時事通信フォト)
【25億円プロジェクト】照ノ富士親方の伊勢ヶ濱部屋継承 相撲部屋建設予定地の地主が明かした「6階建てお洒落建物」構想
NEWSポストセブン
取材に応じる鈴木宗男氏
兵庫県知事選ほか「暴走SNS」と政治はどう向き合うか 鈴木宗男氏が語る「批判の集中砲火を浴びても生き抜くのに必要なこと」、ホテル避難時に “妻の深刻な心配”を実感
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
ギリギリな服装で話題のビアンカ・センソリ(インスタグラムより)
《露出強要説が浮上》カニエ・ウェストの17歳年下妻がまとった“透けドレス”は「夫の命令」か「本人の意思」か
NEWSポストセブン
四川省成都市のPR動画に女性社長役で出演した福原愛(写真/AFLO)
福原愛が中国で“女優デビュー”、四川省の“市のPR動画”に出演 バッチリメイクでハイヒールを履きこなす女社長を“快演”、自虐的な演出も
女性セブン
車に乗り込む織田裕二(2025年1月)
《フジテレビ騒動の影響》織田裕二主演映画『踊る捜査線 N.E.W.』、主要キャストに出演を打診できないままピンチの状態 深津絵里の出演はあるのか
女性セブン