データ分析のアナリストも存在

 また、EDRがあれば、運転手の操作ミス以外にも、交通事故の状況をより詳しく知ることができます。

 複数台が絡んだ追突事故で、どのような順番でぶつかったのか、どれくらいのスピードでぶつかったのか、また、何度衝撃を受けたのか──といったことが推測できるのです。そのため、EDRの記録は警察だけでなく、保険会社による事故調査にも活用されています。

 実際にEDRのデータを分析するアナリストも存在します。EDRデータを読みだす機器CDR(クラッシュ・データー・リトリーバー)を製造するボッシュ社では、データ分析を行う公認アナリストの養成も行っています。

ボッシュの読み取り機(CDR/筆者撮影)

ボッシュの読み取り機(CDR/筆者撮影)

進化する電子制御技術

 昔のクルマには、そうした機能は備わっていませんでした。エンジンは、アクセル・ペダルにつながったワイヤーで、ブレーキはペダルにつながった油圧装置で操作するという、アナログな方法だったからです。

 しかし、1990年ごろから、エンジンやブレーキの制御が電子化されていきます。ワイヤーや油圧のホースではなく、電気信号でアクセルやブレーキが制御されるようになったのです。

 日本におけるEDRの装備は、2006年ごろからスタートしています。2019年の池袋の暴走事故の該当車両となる先々代のプリウスにも同機能が搭載されていました。

 もっともプリウスは初代からブレーキを電気信号におきかえる「ブレーキ・バイ・ワイヤ」という技術が採用されており、その最先端をいく存在でした。逆にいえば、電子制御化が進んでいるので、デジタルで記録を残すEDRとも相性がよかったのです。

 ですから、トヨタは今回の事件に対して、反論することができたのです。

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