トランプ一家のウィンター嫌いの根は深い。2019年には、当時ファーストレディだったメラニアさんを表紙に使わないのかと尋ねられたのに対して、ウィンターさんはメラニアさんの起用には言及せずにこう語った。
「(前大統領夫人の)ミシェル・オバマさんは素晴らしい。ファッションセンスだけではなく、すべてに美しいアメリカのアンバサダー(大使)です」
ララさんの発言は、この時の意趣返しだと思われる。ただ、若い頃にはヌードモデルをしていたメラニアさんが、ヴォーグのカバーガールには不似合いなことも確かだ。
ジルさんは東京オリンピックに華を添えるために訪日が計画されている。一方のトランプ一家は、「トランプ・オーガニゼーション」の脱税疑惑などで捜査対象にされ、同社重役のエリック氏の訴追も取り沙汰されている。ファッション業界紙のベテラン記者は、「ララさんはヴォーグ批判をしている余裕などないはずだ」と苦笑交じりに語る。
ヴォーグの表紙をめぐる「女の戦い」は、権力の栄枯盛衰を象徴している。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)