国際情報

原発計画相次ぐ中国 技術者不足や高齢化で懸念される安全意識の低下

中国の超高齢化社会が様々な業界に影響(写真/共同通信社)

中国の超高齢化社会が様々な業界に影響(写真/共同通信社)

 中国が前例のない超高齢社会に突入する。中国国家統計局によると、2020年の中国の総人口は14億1178万人。出生率が過去最低となった一方、65歳以上人口は約1.9億人に増え「少子高齢化」が顕著になった。

 2022年にも人口減少に転じる可能性が指摘され、政府系シンクタンクの試算では2050年に60歳以上が5億人に迫ると予想される。

 人口構造の変化による影響は社会の至るところに波及する。それは日本で“実証”されてきた。代表的な例が「技術者不足」だろう。働き手が減少するなかで、様々な業界で高齢になった熟練技術者からの技能伝承が難しくなっている。

 とりわけ、社会の基盤となり、安全管理が何より重要なインフラ分野では深刻で、日本の『原子力白書』(平成30年版)でも〈現場の技術者の高齢化が進んでおり、人材の枯渇や知識・技術の継承への不安といった問題が生じています〉と指摘されている。

 中国が同様の経過を辿れば、規模が大きいだけに、そのインパクトは甚大なものとなる。中国では現在44基の原発が稼働し、2030年までに100基に増やす計画がある。技術者が不足していけば、重大事故発生の懸念も増す。

 今年6月には広東省「台山原発」での放射性物質漏れが米CNNなどで報じられたが、習近平指導部は情報統制を敷き、政府は「安全基準の範囲内」と強調した。情報開示に消極的な体制下での事故の影響は、中国国内にとどまらない。

 経済評論家の渡邉哲也氏はこう言う。

「中国の44基の原発のうち半数以上が東シナ海、南シナ海の沿岸部に位置しています。そこで事故が起これば、汚染物質が偏西風や海流に乗って日本にやってくるリスクがあります」

 安全管理を担う技術者が不足することで懸念が生じるインフラ設備には、「ダム」もある。

 国連大学の報告書によると、中国は2万基を超える世界最大のダム保有国で、大半は築50年近いため、老朽化によるリスクが指摘されている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン