党内勢力に勝る3Aは菅首相に続投を条件に二階氏の更迭と甘利氏の幹事長起用を要求し、二階氏は劣勢とみられていた。
ところが、都議選敗北で菅続投シナリオは事実上消え、情勢は混沌としてきた。政治ジャーナリスト・角谷浩一氏が語る。
「劣勢だった二階氏にとっては巻き返しのチャンスで、小池カードがますます重要になっている。自民党では選挙に弱い若手議員や東京選出の議員から小池氏に頼りたいという期待が高まっている。
中谷元・元防衛相や船田元・元経済企画庁長官のように安倍長期政権で冷や飯を食ってきた中間派のベテラン議員からも、小池氏との連携を求める声が出てきた。いまや自民党内の勢力図は政権内の主導権争いを超え、今後の政権の枠組み変更までにらんだ“反小池”と“小池受け入れ派”に二分されつつある」
もう一つの自民党
国政復帰の機会をうかがってきた小池氏には自民の分裂状況は好都合だ。
前回総選挙で「反自民」の希望の党を立ち上げた小池氏は、今回都議選で与党批判を封印し、五輪でもコロナ対策でも政府・自民党との対立を避けて連携を見据えているからだ。
国政政党を持たない小池氏に、「保守合同」へのシナリオはあるのか。
元希望の党の無所属議員は、「小池氏が保守系の野党議員をまとめて新党をつくり、選挙後に自公連立に参加する道がある」と期待している。しかし、「小池氏が考えているのは新党ではない」とみているのは前出の小池ブレーンだ。
「小池さんは総選挙で自民党や公明党議員の中で自分の支援が欲しい候補に推薦を出し、応援に回るつもりだろう。二階さんも“勝てるなら誰の推薦をもらってもいい”と後押しする。そうすれば逆風に苦しむ多くの候補が頼ってくるはずだ。
新党結成にはカネがかかる。だが、この方法なら公認料など選挙費用は自民党が出すから1円も使わず、選挙後には黙っていても自民党内に親小池勢力ができる。自民党以外にも、希望の党の生き残りなど保守系無所属の一部の野党議員を推薦し、自民党が大きく議席を減らせば彼らを自民に合流させればいい。
自民党内に小池印の勢力を拡大し、無所属の親小池議員との『保守合同』で内と外から乗っ取りをかける戦略と言えます」