ビジネス

大阪万博会場予定地「夢洲」 新駅開業の道は困難に次ぐ困難

2019年1月、2025年国際博覧会の会場となる夢洲(奥右上)について説明する大阪市の吉村洋文市長(当時、時事通信フォト)

2019年1月、2025年国際博覧会の会場となる夢洲(奥右上)について説明する大阪市の吉村洋文市長(当時、時事通信フォト)

 人の印象に残るプレゼンテーションだけは巧みだが、検証すると中身がなかったり、成果がまったく上がらないというプロジェクトがある。最近は、その規模が大きく、数も増えてきたような気がするが、鉄道にまつわる開発にも同じようなことが起きている。ライターの小川裕夫氏が、2025年大阪万博会場となる人工島「夢洲」での鉄道駅開発をめぐるプロジェクトについてレポートする。

 * * *
 羽田空港と浜松町を結ぶ東京モノレールや東海道新幹線開業は、1964年の東京五輪に合わせたインフラ開発だったとよく言われる。大規模な国際イベントを契機に地域を開発しようという機運は現在も続いており、2020東京五輪にあわせて様々なプロジェクトが進められた。東京五輪の次の巨大イベントといえば、大阪府大阪市が開催を予定している2025年の万国博覧会だろう。

 2025年大阪万博の開催エリアとなる夢洲(ゆめしま)は、ゴミの最終処分場として埋め立てられた人工島。住所で言えば大阪市此花区となるが、一般的には、USJの近くにあると言った方がわかりやすいかもしれない。

 夢洲はゴミによって埋め立てられたため、現在のところ建物をはじめ水道・ガス・電気といったインフラ整備は進んでいるとは言い難い。だが、まったく見過ごされた場所というわけではなかった。

 夢洲は約390ヘクタールという広大な面積を有する。しかも大阪の中心部から遠いわけではないため、未整備のままでは宝の持ち腐れになる。万博と合わせて整備し、その後の都市開発につなげようという機運が出てくるのは自然な話だった。

 大阪市営地下鉄を民営化して発足した大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、2018年11月に夢洲開発の目玉として夢洲駅タワービルの建設計画を策定。発表直後、大阪市の吉村洋文市長(当時)は、夢洲駅タワービルについて誇らしげにツイートした。天高くそびえる駅ビルは近未来的なデザインだったこともあり、テレビ・新聞各社にも大きく取り上げられる。

 しかし、夢洲駅タワービルの計画は、すぐに撤回された。なぜか?

IR誘致の不調が夢洲開発に影を落とす

「夢洲駅タワービルを実現するためには、2つの条件が前提になっていました。ひとつは、収益の見込みが立つこと。もうひとつは、土地が確保できることです」と説明するのは、大阪メトロ広報課の担当者だ。

 万博会場に予定されている夢洲は、今のところ広大な空き地が広がるばかりということもあり、鉄道などの交通機関は整備されていない。だが、万博開催に合わせて必要になる見込みができたため、鉄道の整備計画が立てられた。

 現在、夢洲については、大阪メトロの中央線延伸計画をはじめ、近鉄の相互乗り入れや京阪の延伸など複数の計画が検討されている。しかし、いくつかの路線は万博開催までの実現は難しそうだ。

関連記事

トピックス

公選法違反の疑いで刑事告訴され、書類送検された斎藤知事(左:時事通信フォト)と折田楓氏(右:本人SNS)
“公選法違反疑惑”「メルチュ」折田楓氏の名前が行政SNS事業から消えていた  広島市の担当者が明かした“入札のウラ側”《過去には5年連続コンペ落札》
NEWSポストセブン
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン