芸能

月亭遊方 屑屋より怖い女房が出てくる陽気な“上方版”「らくだ」

月亭遊方の“上方版”「らくだ」に見入る(イラスト/三遊亭兼好)

月亭遊方の“上方版”「らくだ」に見入る(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、上方落語の月亭遊方が、東京での独演会シリーズで最後を飾った『らくだ』についてお届けする。

 * * *
 月亭遊方が神保町・らくごカフェで2019年から隔月開催してきた全12回の独演会「ときどき無性に遊方噺」が5月30日に最終回を迎えた。最後を飾った演目は『らくだ』。“上方版フルバージョン”と銘打っての、1時間を超える熱演だ。

 上方落語なので、らくだの兄貴分は“ヤタケタの熊”と名乗る。この兄貴分が屑屋をこき使い、家主を“死人のかんかん踊り”で脅して酒と煮しめを出させ、漬物屋から樽を調達する展開を、ドタバタ劇として軽やかに描く。コテコテなのに“臭さ”がないのが遊方の真骨頂だ。

 屑屋が酒を飲み始めてからの変貌が『らくだ』の最大の見せ場。三杯目を注がれた屑屋は「ホンマにええ酒」と美味しそうに飲み、家主から届いた煮しめを「ええ出汁、よう炊けてます」と美味そうに食べながら、「親方、優しい人や」と熊を持ち上げる。飲み続けてどんどん上機嫌になり、家主が“死人のかんかん踊り”で「ヒーッ!」と怯えていたと何度も再現しては大笑い。

 四杯目を注がせた屑屋は、昔は道具屋の主人だったが酒で店を潰して裏長屋住まいになり、よく出来た女房も貧乏慣れしてなくて若死にした、という身の上をアッケラカンと語る。そこに湿っぽさは皆無。生前のらくだに虐められたという恨み言も一切ないので、暗くならない。

 今の女房に「商いの途中で酒飲んだらあかん言うてるのに、また酒飲んで目の前の人を半殺しにしたやろ!」と叱られて半殺しにされた、と笑う屑屋。「怖いカカァやな」「周りは“土佐犬のお花”と呼んでる」

 酒乱の屑屋より怖い女房が出てくる『らくだ』は初めてだ。

「商いに廻ったらどうや」と言われた屑屋は「アホウ! 注げ! 半殺しにするぞ!」とキレるが、熊が「大きな声出すな」と酒を注ぐと「親方、勧め上手」と再び上機嫌になり、「兄弟分になりましょ」と持ちかける。屑屋に命じられて熊が女所帯から剃刀を借りてきて後半へ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

訃報が報じられた日テレの菅谷大介アナウンサー
「同僚の体調を気にしてシフトを組んでいた…」日テレ・菅谷大介アナが急死、直近で会話した局関係者が語る仲間への優しい”気遣い”
NEWSポストセブン
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン