「菅総理は西村長官の発言に“なぜあんなものが出るんだ”と仰天していたといいます。それまで菅総理は、“両陛下は当然、要請に応じて五輪に出席されるもの”と安易にタカをくくっていたので、このとき初めて陛下の五輪への疑念に気づいたのでしょう」(官邸関係者)
それまで、「菅総理が両陛下の五輪出席を巡って議論や検討をしているのを聞いたことがなかった」(別の官邸関係者)という。つまり、このときにやっと菅官邸は事態の深刻さに気づき、大慌てで、陛下の五輪出席に向けた調整に踏み出したのだ。そもそも陛下の疑念が表に出ざるを得ない「布石」もあった。
「拝察」発言の2日前、菅首相の姿が皇居・宮殿にあった。陛下に対して国政について報告する「内奏」のためだ。その日のテーマの1つが東京五輪だったという。
「当時は菅総理が有観客での開催に強くこだわっていたので、陛下は五輪における感染対策について総理に確認されたはずです。しかし、具体策なき“安心安全”を繰り返すばかりの総理が、陛下が納得される説明をしたとは到底思えません。
また、当然のように“陛下も雅子さまも五輪の行事には全部出てください”“外国からの賓客の接遇も全部やってください”と伝えた可能性すらある。陛下は、それまでも五輪の方針や進捗について何も知らされずにいたことに違和感を持たれていたであろう上に、そうした内奏での首を捻らざるを得ないようなやり取りがあって、一気に陛下の疑念が頂点に達したからこそ、長官の『拝察』発言につながったのでしょう」(前出・官邸関係者)
そこまで「溝」が深くなってしまっていた以上、両陛下の五輪への参加の調整がスムーズにいくはずがなかった。
「宮内庁は陛下をお守りする立場として、菅官邸に不信感が強かった。一部には、“具体的な感染対策がとられない以上、陛下は開会式で会場を訪問されず、リモートで参加される手段もあり得る”という強硬な意見もあったようです。
しかし、菅首相としては、各国首脳やバッハ会長ほかIOC幹部が会場入りするのに、陛下がリモート参加では面目も丸潰れです。それだけは絶対に避けたいとなった。なんとか陛下にスタジアムにお越しいただくために、水面下ではギリギリの調整が進められたようです」(前出・政治ジャーナリスト)
※女性セブン2021年8月12日号