実際に会って、食事に行った女性もいました(イメージ)

実際に会って、食事に行った女性もいました(イメージ)

 加藤さんがコミュニティ上でやりとりしているアカウントを見ると、いずれも若くて美しい日本人女性らしき写真があるプロフィールになっていた。しかし、彼女たちの勤務先は「AKB48」や有名アニメのタイトルになっていたりと明らかに不自然で、とあるアカウントなどはプロフィール写真にかつてネット系闇金サイトで多用されていたフリー素材の女性写真を使っていた。少し考えれば、すこしでも調べようと思えば、割と簡単に「実在しない人」とわかりそうなものばかりがズラリと並んでいるのである。

 だが、加藤さんはこうしたアカウントの書き込みに「可愛いですね」とか「素敵です」、そして時には「ぜひお会いしてみたいです」と大胆な返信をしてまわっていた。いいね、などの反応や返信があれば、即座にレスポンスだ。

「いきなりLINEでお話ししましょう、は詐欺ですね。有料の出会い系サイトに誘導されたり、詐欺サイトのリンクが送られてきたりして危険。私はどれが危ないか、経験からわかります」(加藤さん)

 会話の端々に自信あふれる一言を挟む加藤さん。ではこの二年間の間で実際に「出会う」ことができたのかと聞くと、人様に誇れるような「戦果」をあげられていないのだと自虐的な笑みを浮かべる。

「一度お会いした女性は実在する日本人の方で40代だと言っていましたが、会ってみるとどうみても私より年上。人気占い師だということで占ってもらったら、人助けをすると一生安泰に暮らせると言われたんです。お食事のあと部屋に誘われて、さらに借金の相談までされて『人助けしてほしい』って……。まあ、それでも、今はコロナでリアルでの出会いは期待できない。今後、ネットを使った出会いが主流になるし、今後も続けますよ」(加藤さん)

 加藤さん自身、誰かに明らかに騙され、金品を巻き上げられている、ということではないし、本人にある程度の知識もある。ただし、可能性があると思いつつやりとりをしているSNS上の女性アカウントは、ほぼ100パーセントが偽アカウントであり、情報収集をされた挙句、詐欺のカモリストに名前を載せられ、危険な目に遭う可能性だってないとはいえない。

 詐欺師に騙される可能性について言及すると、やはり「それはわかっている」と筆者を静止する加藤さん。今まで「出会ってきた」女性たちについて、完全に信用しているわけでもない様子だが、そうは認めたくない気配が加藤さんからは漂ってくる。詐欺師でもいいから、女性とされるアカウントとコミュニケーションを取りたい、という欲求がそうさせているとしたら、なんともいえない悲しみを感じてしまう。だが、本当に出会いを求める人にとって、このやり方はあまりに非生産的という他ない。

 なぜ、加藤さんはほとんど騙されている状態にも関わらず、SNS上での出会いを求め、信じ続けているのか。似たような過去の事件と、それに関わってしまった男性たちのことを思い出した。

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