6月から発言してきたのに、なぜ急に話題となったのか。
「中国の女性たちは、女性がこんな告発をすれば尻軽女と見られてしまうから、多くの人は口をつぐむところだが、都さんは引かなかった……といった風に受け取り、支持を得たのです。力ある者が愛人を作るのは当たり前という社会ムードに反発が高まっていたという時代背景にも上手く合致したんだと思います。実際、私の周囲の中国人女性も猛烈に怒っています。一方で、男性はそこまで騒ぐことでも……とこっそり思っている人も多いようです」
最悪の場合「死刑」の可能性も
女性たちの怒りが爆発し、決戦書をきっかけに自体は急変する。わずか24時間の間にクリスとアンバサダー契約を結んでいた11社の企業が契約打ち切り、または一時中止を発表した。さらに女性アイドルグループ「SNH48(上海48)」の元メンバー、張丹三(ジャン・ダンサン)が「私もクリスから誘いを受けたことがあった。女性は気をつけて」と発言するなど、クリスに関する暴露があちらこちらから浮上したのだ。
7月23日には、北京警察が現段階での捜査結果を発表。都さんは2020年末に「ミュージックビデオの面接」を名目にクリスの自宅に呼び出されていたことが明らかとなった。その後、約半年間にわたり関係が続いたが、クリスに別の女性がいることが発覚。都は騙されたと怒り、ネットで告発文をアップするようになったという次第だ。
ちなみに余談だが、警察の調査で、都に取り入った詐欺師がいたことも判明している。「私もクリスに騙された被害者女性です」と装って都の信頼を得て、都とクリスのチャット履歴のスクリーンショットなどの資料をゲット。それをもとにクリスの事務所に「300万元(約5100万円)で和解しよう」と持ち掛けていたのだとか。
そして冒頭に述べたように、31日夜には警察が身柄を拘束している。正式な立件はまだだが、まず間違いなく起訴されることになる。強姦罪の量刑は3年から10年だが、複数の女性や未成年が犠牲になるなど、悪質と判断された場合には、死刑の可能性まであるという。
死刑になるかまでは分からないが、悪質と判断されて10年以上の懲役となる可能性は高そうだ。というのも、クリスは「莫大な資産を持つ権力者」であり、「カナダ国籍の外国人」という二重の“特権”に守られた存在だとして、庶民の怒りと嫉妬の的だからだ。ここで重罰を与えないと、「やはり上級国民は恵まれている」と民草の不満につながってしまう。
中国共産党の規律監督部門である中央規律委員会は、汚職官僚の取り締まりなどを担当するお堅い部局なのだが、8月1日には異例にも今回の逮捕に言及。「絶対に手を緩めない」と厳罰で臨むことを表明している。