街中のさまざまな場面で目にする“アルコール消毒”(時事通信フォト)

街中のさまざまな場面で目にする“アルコール消毒”(時事通信フォト)

換気しなければ本末転倒

 昨年6月から乗客にアルコール除菌シートを配っている日本航空では、そのシートで客席の窓を拭く乗客が続出。

「アルコール成分は窓の素材であるアクリル樹脂を劣化させる恐れがあるため、一時、機内アナウンスで注意喚起を行なっていました」(同社広報部)

 一般社団法人アルコール協会も「アルコールは素材によって変質や劣化を起こす可能性があります。一番の注意点は引火しやすいこと。火気の近くでは絶対に使わないで」と注意を呼びかける。

 お門違いな“コロナ対策”はほかにもある。西村氏が指摘する。

「コンビニのレジにあるビニールカーテン、飲食店のパーティションも感染対策としてはほとんど意味がありません。目の前の人への飛沫の直接到達は防げても、ウイルスを含むエアロゾルはカーテンやアクリル板など簡単に越えてしまう。

 レジのすぐ後ろが壁なら、壁とカーテンの間に囲まれた空間からエアロゾルがなかなか抜けずに、レジ係が長時間にわたりウイルスを吸い込む恐れが生じる。換気のよくない閉鎖された室内ではビニールカーテンやパーティションはむしろ無いほうが安全なうえ、エアロゾル対策として有効な『換気』に目が向かないようでは本末転倒です」

 コロナ感染拡大以降、多くの施設のトイレで続くハンドドライヤーの利用停止も“対策してる感”のための象徴的な措置と言えるだろう。

 経団連は昨年5月に政府の専門家会議による「感染リスクあり」の指摘を受け使用制限を盛り込んだ指針を策定したが、その後、一転。今年4月、実証実験の結果を踏まえ感染リスクは低いと判断し、指針を見直した。

「実験により、他の空間に比べてエアロゾルが多く飛ぶ事実はないことがわかり制限を緩めました」(経団連総務本部担当者)

 それでも、今なお利用停止中のハンドドライヤーを目にする機会は多い。

過剰な対策による不自由

 ウイルスの吸い込み防止に有効なマスクでさえ、間違った使われ方が多い。

「3密回避とマスク着用が最も有効な感染防止手段であることは間違いありません。ただ、外を歩くだけなら、マスクは必要ありません。熱中症の危険性がある時期はなおさらで、屋外の広い場所ではすれ違う相手が感染者でたとえ咳をしたとしても、ましてや息をしているだけならリスクはありません。ここまでの話は、相手がいま話題になっているデルタ株でも同じです」(西村氏)

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