みらいクリニック院長の今井一彰医師も、夏場のマスクの弊害について懸念する。
「夏場にマスクをしていると、暑さのため口呼吸が増えて口内が乾燥し、雑菌が増えることで感染症に罹りやすくなってしまいます。口呼吸で唾液が蒸散してしまうと飲み込む機会が減り、嚥下に使う筋力が低下することも考えられる。嚥下力が低下すれば、誤嚥性肺炎を起こしやすくなることが懸念されます」
歯科医の照山裕子氏も、「マスク着用により口呼吸が習慣になると口周りの筋肉が衰え、口を閉じる力が弱まる。そのまま家族と過ごせば家庭内感染のリスクも上がります。口が渇くと免疫の主体である唾液が行き渡らないため、虫歯や歯周病といったトラブルを招く原因にもなります」と指摘する。
未知の新型コロナウイルスの感染拡大から1年半が経ち、世界中でウイルスや感染症について知見が積み重なってきた。前出・西村氏は日本の現状をこう憂う。
「日本ではゼロリスクを追求するあまりに無駄で過剰な対策が横行して、本来なら必要ないはずの不自由が生じています。トンチンカンな対策が、コロナ以外での不健康や社会の分断などの弊害を生んでいるのです」
コロナ禍で出現した“マスク警察”や“自粛警察”は自らが信じる正義を他者に押し付け、社会にさまざまな軋轢を生んだ。今や“慣習”と化してしまったアルコール消毒が続くことで“消毒警察”が現われないよう、切に祈りたい。
※週刊ポスト2021年8月20日号