自筆の油絵と千葉真一さん

背景の油絵は千葉さんの自筆。多才だった(写真は2018年)

 千葉さんと野際さんは1994年に離婚。マスコミは当時、家庭を顧みずに膨大な借金を作った千葉さんに対し、野際さんが「三下り半」を突きつけた、というストーリーを大々的に報じた。しかし、『女性セブン』記者は生前の千葉さん本人から次のような話を聞いていた。

「決して憎しみあって別れたわけじゃない。陽子はいつも僕の態度や目の色が変わると察知して、『パパ、おいしいワインでも飲みますか?』なんて言ってくれる気遣いの人。僕は家で一度も怒ったことがないし、夫婦喧嘩もしたことないんです。彼女との結婚生活は本当に楽しい日々でした。

 なぜ別れたのかというと、僕は映画の夢を叶えるために、どうしてもアメリカに行きたかった。でも彼女は日本で女優を続けたいし、向こうで暮らす自信もないと言う。あくまで僕の夢のために『別れよう』と切り出したのは彼女の方でした。財産分与も慰謝料もなし。『一時的に別れよう』そんな感じだったのです。

 あのとき、一緒にアメリカに行っていたら、ずっと夫婦のままだったかもしれない。そんなこと言うと2番目の妻に怒られるけどね(笑い)」

 離婚後、野際さんはそれまでセーブしていた女優業に力を入れていく。野際さんは離婚の少し前に出演した『ずっとあなたが好きだった』(1992年・TBS系)で、息子の「冬彦さん」を溺愛する母親役を演じて以来、“着物姿の姑役”が定着。ドラマ界で引っ張りだこになった。

「よかったと思うのは、離婚してからの彼女が女優としてハツラツと輝いてくれたこと。いま思えば、陽子は結婚に向いていなかったのかもしれない。僕の世話をしたり、ご飯を作ったり、そんなことをしてちゃダメな人だった。でも、陽子が作ってくれたパスタは、いまでも思い出すくらいおいしかったなぁ」(千葉さん)

 野際さんも離婚後、親しい知人に対し、「私たちは“完婚”したの。結婚生活が途中でダメになったのではなく、完成したの。だから別れたのよ」と語っていたという。今頃は天国で再会し、仲良く寄り添っているのかもしれない。

※女性セブン2021年9月9日号

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