ライフ

東大の「猫の腎臓病治療薬研究」に寄付殺到 寿命30歳も夢じゃない

「猫の腎臓病の治療薬研究」が注目を集めている(写真はイメージ)

「猫の腎臓病の治療薬研究」が注目を集めている(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大でステイホームを余儀なくされ、ペットへの関心が高まっている。動物と生活を共にし始めると、気になるのがペットの健康だ。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、猫の寿命が大幅に伸びそうな治療薬研究について紹介する。

 * * *
 7月中旬、東大の「猫の腎臓病の治療薬研究」についての記事が時事通信社からネット配信された。予想以上の反響を呼び、多くの愛猫家などから東大基金宛てに寄付が殺到した。その額がすごい。わずか2週間余りで約1億4600万円に達したという。

 腎臓病は、猫の死因の多くを占めている。この治療薬が開発されれば、猫の寿命が10~15年ほど延びて、30歳になるのも夢ではない。

 この研究を行なうのは、東大大学院の宮崎徹教授。血液中のあるタンパク質を発見し、「AIM」と名付けた。AIMは、体のなかにある死んだ細胞や老廃物といった“ゴミ”に集まる。そして、マクロファージなどの細胞に、「ここにゴミがあります」と知らせる働きをしていることがわかった。

 腎臓病は、急性腎障害によって死んで剥がれ落ちた細胞が、尿細管という管をふさいでしまうことで悪化する。AIMがふさがった尿細管に集まって、ゴミがあることを知らせてくれるため、尿細管は掃除されて、腎臓の障害は治っていく。

 しかし、そのAIM、人間や犬はもっているのに、猫はもっていない。ならば、AIMを培養細胞から取り出して精製した薬を用いれば、猫を腎臓病から救うことができるというのが、この治療薬の発想だ。

 獣医の協力のもと、すでに猫の腎臓病の進行を止めるなどの例を確認しているという。これがうまくいけば、腎臓病で透析を受けている人間の患者さんにとっても、朗報となる可能性がある。愛猫家でなくても、色めき立ちたいニュースである。

【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後に長野県の諏訪中央病院に赴任。36年間、医師として地域医療に携わり、現在は諏訪中央病院名誉院長を務める。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2021年9月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」